過去の政権で長官級を務めた人物A氏は、自身が受けた2度の人事検証について、「1度目は何としても駄目にしようとするかのように鋭い質問が続いたが、次はとても穏やかな質問ばかりだった」と語った。高位公職者の人事検証の際、民情首席室では通常200件を超える質問事項を1時間以上かけて尋ねるが、2度の検証のトーンが全く違ったということだ。初回の検証では、大統領の耳に誤った情報が入っていた状況だったという。しかし誤解が解けた後、A氏は2度目の検証を経て長官級候補に指名され、人事聴聞会も無事に通過した。民情首席秘書官や秘書室長など大統領府の参謀陣が人事において肯定と否定のどちらに傾くかによって、検証の鋭さが変わり得るということだ。
今回のオ・グァンス元民情首席秘書官の任命過程でも、同様のことが起きた可能性がある。李在明(イ・ジェミョン)大統領が司法研修院の同期であるオ氏の起用を考えていたが、特捜部検事出身などを理由に「不適切だ」とする議員の反対の声が上がり、自ら説得に乗り出す場面もあった。大統領の意向が明らかになった状況で、大統領室がオ氏に対して綿密に検証を行わなかったという見方が多い。不動産の名義借り管理に続き、追加で15億ウォン台の名義貸し融資疑惑まで浮上すると、オ氏は結局辞意を表明した。大統領室は、オ氏の検証過程で問題とされた疑惑を事前に把握していたかどうかについても、明確な回答ができなかった。
李政権初の民情首席秘書官が就任5日で退くこととなり、「民情首席の惨劇」も再び取り沙汰されている。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代、任期を終えた後に法務部長官候補に指名され、子どもの入試不正や私募ファンド疑惑などで物議を醸した曺国(チョ・グク)前祖国革新党代表をはじめ、江南(カンナム)の複数の住宅を最後まで処分せずに退いた金照源(キム・ジョウォン)氏、検察幹部人事を巡り法務部長官と衝突して辞表を出した申炫秀(シン・ヒョンス)氏、息子の就職志願書問題で辞任した金晋局(キム・ジングク)ら元民情首席秘書官が代表的だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権は発足後、民情首席秘書官のポストを廃止したが、復活後に任命された金周賢(キム・ジュヒョン)前民情首席秘書官は、「非常戒厳」の発令に関する法的検討すらできず、内乱容疑の被疑者として取り調べを受けている。朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代の禹柄宇(ウ・ビョンウ)元民情首席秘書官も、不法査察など職権乱用容疑で有罪判決を受けた。
検察・警察・国税庁などの権力機関を統括し、取り締まり機能はもとより、公職の規律や人事検証などを担当する民情首席秘書官は、いわゆる「刃の上に立つ」ポストだ。大統領の意思決定過程に大きな影響を及ぼし得る一方、その権力を誤って振るえば、自らをも傷つけ得る。実際、歴代の民情首席秘書官たちは、民情首席秘書官に求められる高い道徳性を満たせなかったり、対立を調整する能力が不足していたり、権限を濫用したりしたことで大きな後遺症を招いた。
大統領室はオ氏の辞意を受理したことを発表し、「李大統領の司法改革の意志と国政哲学を深く理解し歩調を合わせられる人物として、早期に次期民情首席秘書官を任命する予定」と明らかにした。しかし民情首席秘書官候補者には、高い道徳性と能力、そして何より大統領の決定に対して「レッドチーム」を担える強い意志と信念が必要だ。私的な縁や「国政哲学」といった名目で「コード人事(理念が同じ人物の登用)」で再び民情首席秘書官が任命されるなら、「惨劇」は李在明政権でも繰り返されるかもしれない。
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