
韓国政府が11日に北朝鮮に向けた拡声器放送を電撃的に停止した中、北朝鮮もいわゆる「幽霊の音」と呼ばれていた韓国に向けた「騒音放送」を12日から中断した。李在明(イ・ジェミョン)大統領は同日、「消耗的な敵対行為を止め、対話と協力を再開する」と述べた。
韓国軍合同参謀本部(合参)は、「12日、北朝鮮の騒音放送が聴取された地域はない」と発表した。北朝鮮の騒音放送は、北朝鮮に向けた拡声器放送が停止されて約10時間後の12日午前0時前後に中断されたとされる。北朝鮮が騒音放送を中断したのは、昨年7月に北朝鮮が韓国に向けて「ごみ風船」を散布し、それを受けて尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が北朝鮮向け拡声器放送を再開したことに対抗して騒音放送を開始して以来、約1年ぶりとなる。
北朝鮮の騒音放送は、韓国側の拡声器放送がニュース、音楽、天気など多様なプログラムを編成して送出していたのとは異なり、金属を削る音や泣き叫ぶ声など奇怪な騒音だった。北朝鮮向け放送は休憩時間を含め午前6時から午後10時まで送出されたが、騒音放送は接境地域の中でも人口密集地域の江華(カンファ)などに向けて深夜や早朝を問わず24時間不規則に送出された。このため、住民は精神的苦痛を訴えていた。
北朝鮮の騒音放送の中断について、韓国統一部の当局者は、「北朝鮮の対応により接境地域の住民の苦痛を軽減できた」とし、「南北間の軍事的緊張が緩和され、相互信頼の回復に意味のある契機となった」と評価した。
ただし、韓国政府内部では、「北朝鮮が緊張緩和措置を継続するかどうかは確信できない」と慎重な見方も出ている。統一部当局者は、「まだ1日しか経っていないので、今後の動向を見守る必要がある」と話した。北朝鮮は放送を中断しながらも、スピーカーなどの放送関連設備は撤去していないことが確認されている。これについて、いつでも騒音放送を再開できるというメッセージを送ったのではないかとの解釈も出ている。
北朝鮮は、2023年末に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「敵対的2国家論」を宣言し、南北関係を敵対的交戦国関係と規定した。そして、非武装地帯(DMZ)内に地雷を埋設するなど物理的な断絶措置を取ってきた。このため、今回の措置が接境地域での緊張緩和を超えて南北関係の改善につながると期待するのは時期尚早との指摘もある。
李氏は同日、禹相虎(ウ・サンホ)大統領政務首席秘書官が代読した「6・15首脳会談25周年記念式典」の祝辞で、「南北首脳が会い、韓半島の平和統一を実現するために誓った25年前の約束は、断絶と緊張、不信が深まった今日、決して忘れてはならない歴史の教訓だ」とし、「中断された南北対話チャンネルの早期復旧に努める」と述べた。
一部では、李氏の公約の一つである「9・19南北軍事合意の復元措置」も韓国政府が先制的に実施する可能性があるとの見方が出ている。軍事合意上、敵対行為禁止区域だった軍事境界線(MDL)南側5キロ以内の射撃場や西北島嶼での砲撃訓練を禁止する可能性が提起されている。ただし、韓国軍関係者は、「今月中旬と下旬にも該当地域で計画された訓練があり、計画に変更はない」と述べた。韓国政府は、北朝鮮がミサイル挑発などを行う可能性が依然としてあるため、追加措置については北朝鮮の動向を見ながら慎重に決定する方針だという。
孫孝珠 hjson@donga.com