米ホワイトハウス報道官は11日、「トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との書簡の交換に前向きであり、1期目の時のシンガポール会談で達成された進展を再び見たいと考えている」と述べた。これは、ニューヨーク駐在の北朝鮮外交官が正恩氏宛のトランプ氏の親書の受領を拒否したというNKニュースの報道に対する反応だ。一方、韓国政府は李在明(イ・ジェミョン)大統領の指示により、北朝鮮に向けた拡声器放送を全面的に停止し、北朝鮮も韓国への騒音放送を中断した。
トランプ氏の北朝鮮への親書はすでに馴染みのあるものであり、予測可能なものであった。トランプ氏は第1次政権時に正恩氏と「ラブレター」を数十通もやり取りしていた。トランプ氏は第2次政権の発足以来、北朝鮮を繰り返し「核保有国(nuclear power)」と呼び、4月初めには「(すでに)意思疎通がある。おそらくある時点で何かをするだろう」とも述べた。そのように正恩氏との対話は、いつでも取り出して振ることのできる「ポケットの中のカード」と見なされてきた。しかし、北朝鮮はその親書の受領を拒否した。
北朝鮮の対応もある程度予測可能なものだった。トランプ氏と3回も会談したが、正恩氏は何も得られなかった。現在、北朝鮮の核・ミサイル能力は7年前とは比較にならないほど高度化し、国際社会の対北朝鮮制裁網も崩れ、ロシアへの派兵で確実な利益を得るまでになった。対米「最強硬対応」を宣言した状況で、米国から確実な利益を得られない限り、意思疎通も拒否するという姿勢なのだろう。
北朝鮮が、韓国の新政権の融和措置に応じる可能性はさらに低い。政権交代後、新政権は民間団体による北朝鮮へのビラ散布を事実上禁止し、北朝鮮に対する心理戦放送も先制的に停止した。しかし、南北を「敵対的2国家」関係と規定し、高強度の対南断絶措置を継続してきた北朝鮮にとって、どのような前向きな提案にも応じる可能性は低い。一時は米国との対話のための橋渡しとして韓国が必要だったが、今ではそれすら必要ないという認識なのだ。
このような状況で、韓米は調整なしにそれぞれ北朝鮮にアプローチしている。「正恩氏と良好な関係を築くことが大きな資産だ」とするトランプ氏と、「どんなに高価な平和も戦争よりはましだ」とする李氏が競うように北朝鮮にアプローチしているため、正恩氏はますます居丈高になるしかない。6ヵ月間の外交空白が終わった今、韓米の対北朝鮮政策の調整を急がなければならない。米国が北朝鮮との直接交渉に乗り出し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけを除去する「スモールディール」を締結し、その過程で韓国が排除されるような事態だけは避けなければならない。
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