年老いた女性が手すりの後ろに立ち、正面を見つめている。白い帽子とショールを身にまとい、右手で自分を指し示している。袖口からは白い紙が飛び出している。わずかに開いた口は、何かを語ろうとしているかのようだ。この女性は一体誰で、何を伝えようとしているのだろうか。
ジョルジョーネが描いた『老女』(1506年)は、イタリア・ルネサンス時代に制作された最も驚くべき魅力的な肖像画の一つだ。33年という短い生涯を送ったジョルジョーネは、画家としての経歴も短く、残した作品も多くはない。しかし、想像力を刺激する詩的な風景画や肖像画によって、ヴェネツィア・ルネサンス美術の創始者として評価されている。特にこの絵は、ジョルジョーネが君主や貴族ではなく、平凡な老人を描いた唯一の肖像画であり、より特別な意味を持つ。絵のモデルは画家の母親とされている。しかし、ジョルジョーネが描こうとしたテーマは、母親そのものではない。女性の袖から飛び出した白い紙には黒い文字が記されている。「COL TEMPO」——「時とともに」という意味のラテン語だ。この短い言葉こそが、画家が伝えようとしたテーマであり、メッセージだ。つまり、この絵は単なる肖像画ではなく、時間に対する思惟、すなわち老いと死に対する思索を表現したものなのだ。
絵の中の女性は、死を前にして決して悲しんだり絶望したりしているようには見えない。恐れている表情でもない。むしろ、画面の外にいる鑑賞者を哀れみと愛情のこもった眼差しで見つめている。長い人生経験を通じて、自然の摂理と世の理を悟った洞察者のようでもある。
500年以上前の絵画だが、老女は真剣な表情で画面の外の私たちにこう語りかけているようだ。「この世に変わらないものはない。結局、すべては消え去る。富も、権力も、若さも、美しさも」。人は死を前にして初めて平等になる。だからこそ、執着するなと忠告しているかのようだ。
美術評論家
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