2014年7月23日、ソウル銅雀区(トンジャクク)のあるカフェの前。在来市場の路地近くにあるカフェの前に取材陣が陣取っていたため、事情を知らないある住民が記者に「何かあったんですか」と尋ねた。7・30再補欠選挙で、ソウル銅雀乙を選挙区として出馬した新政治民主連合(現「共に民主党」)の奇東旻(キ・ドンミン)候補と正義党の魯会燦(ノ・フェチャン)候補が一本化交渉を行っていると説明すると、それを聞いた60代の男性が隣にいた別の住民に、「花札をしているんだけど、『光』を持つ人を決めているらしい」と言った。
的確な比喩だったので、鮮明に記憶に残った。通常3人でする「ゴーストップ」に4、5人が参加する場合、1、2人は手札を見た後にゲームを続けるかどうかを選択する。手札に「光札」がある場合、それを売ることができる。その代わり、ゲームに参加した人は光札を売った人に「光札の代価」を支払わなければならない。大統領選の候補一本化において「光札の代価」は、支持を表明する代わりに連立政府の樹立や公職の配分など対価を得るのと似ている。勝利の可能性が高くない場合、出馬を断念して得られる対価が満足できるものであれば、光札を売るのが得策となるのだ。
翌日、支持率が相対的に低かった奇氏が最終的に辞退し、魯氏に一本化されたが、選挙結果はセヌリ党(現「国民の力」)の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)候補の勝利だった。一本化が遅れたことで効果が半減したせいもあった。当時、7月21日から投票用紙が印刷されたが、一本化は24日になって実現した。
6月3日の大統領選で最後の変数とされた候補一本化問題は、結局「光札売り」を決められないまま終わるようだ。保守系与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補と韓悳洙(ハン・ドクス)前首相の一本化は、党員が状況を覆したことで、韓氏の「九日夢」として虚しく終わった。金氏と保守系野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補の一本化は、支持率の高い金氏側からは李俊錫氏の辞退を促す一方、李俊錫氏は「戒厳勢力との候補一本化は今回の選挙ではない」と断言し、事実上決裂した。
金氏と李俊錫氏との保守陣営一本化の議論が物別れに終わったのは、一本化しても対価が明確でなかったためだろう。辞退した候補の支持層の一部が相手候補に吸収されず、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補や浮動層に流れるという世論調査の結果が相次ぎ、一本化しても勝算が高くないという現実的な面が大きい。また、金氏と戒厳や弾劾などに対する立場が異なる李俊錫氏としては、むしろ一本化を拒否し、10%台の支持率を確保して名実共に大統領候補としての地位を得るほうが得策だと戦略的に判断したとの見方が多い。仮に一本化に成功したとしても、シナジー効果を最大化できるような感動的なストーリーを作り出すのは難しいだろうという声もある。
大統領選のたびに繰り返される候補一本化の議論は、まるで古いレコードを再生するように陳腐だ。野合や政治工学的な戦略だという批判にもかかわらず、勝利のためにアイデンティティの異なる勢力と手を組む一本化が生んだ弊害は少なくない。国政ビジョンや政策公約など、すべての重要な課題をブラックホールのように吸い込んでしまう一本化は、政治への失望と無関心を助長する副作用をもたらした。過半数を獲得した候補がいない場合、1位と2位の候補が決選投票を行えば、候補一本化の議論は不要になる。憲法改正による大統領選の決選投票制の導入が必要な理由だ。国民も大統領選のたびに繰り返される「光札売り」の登場をこれ以上見たくないだろう。
アクセスランキング