
北朝鮮が、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席した中、「北朝鮮版イージス駆逐艦」である5千トン級の新型多目的駆逐艦の進水式を行った。特筆すべき駆逐艦がなかった北朝鮮に、総合戦闘を遂行する大型駆逐艦が初めて登場したのだ。正恩氏がこの駆逐艦に核弾頭搭載ミサイル搭載も可能だと示唆し、韓米にとって新たな核の脅威になり得ると指摘されている。
北朝鮮の労働新聞は26日、新型多目的駆逐艦の進水式が朝鮮人民革命軍(パルチザン)創建記念日の25日に南浦(ナムポ)造船所で行われたと報じた。北朝鮮は先月8日、造船所の艦船建造現場で正恩氏が新型駆逐艦2隻を建造中の様子を視察する写真を公開したが、このうちの1隻と推定される。この駆逐艦は「崔賢(チェ・ヒョン)」と命名された。崔賢は、金日成(キム・イルソン)主席のパルチザンの仲間で、崔竜海(チェ・リョンへ)朝鮮労働党書記の父親だ。
娘のジュエ氏と共に進水式に出席した正恩氏は、演説を通じて、「この駆逐艦の出現で、わが海軍武力を現代化する突破口が開かれた」とし「対空、対艦、対潜、対弾道ミサイル能力はもとより、攻撃手段、すなわち超音速戦略巡航ミサイル、戦術弾道ミサイルをはじめ、陸上打撃作戦能力を最大限強化できる武装体系が搭載されている」と主張した。この主張が事実なら、韓米の弾道ミサイル攻撃など各種攻撃を阻止する性能を備えているうえ、これまで戦略巡航ミサイルや戦術弾道ミサイルなどに核弾頭搭載が可能だと主張してきたことから、核攻撃も可能という意味になる。
専門家たちも、北朝鮮が公開した写真を分析した結果、艦艇内の垂直発射装置(VLS)が計74基識別され、74基の多様なミサイルを発射できると見ている。このうち中間以上の大きさである約40基が弾道または巡航ミサイル発射用と推定される。
正恩氏は、「来年もこのクラスの戦闘艦を建造する」と重ねて強調した。これを通じて「遠洋作戦能力」を保有するなど、最強の海軍武力を持つということだ。韓国軍当局は、北朝鮮がロシアの技術移転を受け、大型駆逐艦と潜水艦の建造に拍車をかける可能性に注目している。
しかし、依然として北朝鮮の海軍力は韓米海軍力と比較にならないほど後れているという評価が多い。韓国海軍のイージス艦「世宗大王艦」級(7600トン級)3隻は、垂直発射装置が1隻当たり100基を超える。これより戦闘力が優れているイージス駆逐艦「正祖大王艦」(8200トン級)3隻も今年の年末1番艦を皮切りに順次実戦配備される。米海軍のイージス艦の性能は世界最強レベルだ。慶南(キョンナム)大学極東問題研究所の林乙出(イム・ウルチュル)教授は、「(正恩氏が示唆した)核搭載の可能性は韓米日に心理的・戦略的圧力を加えるものであり、遠洋作戦は中ロとの協力を通じて太平洋内の勢力バランスに影響を与え得ることを意味する」とし「経済難の中でも軍事的成果を誇示し、住民の団結力を高めようとするもの」と分析した。
正恩氏は、「(海軍力強化の)2つ目の信号弾は、核動力(原子力)潜水艦建造事業になるだろう」とも明らかにした。北朝鮮は先月、正恩氏が「核動力戦略誘導弾潜水艦」建造現場を視察する様子を公開したが、北朝鮮がロシアへの大規模派兵の見返りに原子力潜水艦完成のための核心技術の移転を受けたのではないかという観測も流れている。ただし韓国軍当局は、北朝鮮が無限潜航が可能で奇襲核攻撃ができる代表的なゲームチェンジャーである原子力潜水艦を短期間で確保することは不可能だと見ている。
正恩氏が、「崔賢」などを運用する海域として「中間界線海域」に言及したことも関心を集めている。これまで北朝鮮は、西海(ソへ・黄海)と東海(トンへ・日本海)に設定された海上軍事境界線である北方限界線(NLL)を無視し、NLL以南に北朝鮮が一方的に宣布した「警備界線」の有効性を強調してきたが、「中間界線海域」に言及したのは初めてだ。これにより、北朝鮮がまた別の海上軍事境界線である「中間界線」を主張するために近くNLL付近で挑発に出る可能性があると懸念されている。
孫孝珠 hjson@donga.com






