
「石器時代の石包丁から印刷機、原子爆弾まで、これまでの科学技術革命は私たちの手にある道具だった。しかし、人工知能(AI)は自ら決定することができる。誰を爆撃するか、どんな兵器を発明するか分からない。AI革命はこれまでとは次元の異なる脅威になり得る」
世界的なベストセラー作家であるイスラエルの歴史家、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(49)が、2017年の著書『ホモ・デウス』刊行以来8年ぶりに来韓した。昨年出版した書籍『Nexus』の国内出版に合わせて訪韓したハラリ氏は20日、ソウル鍾路区(チョンロク)で懇談会を開き、AIと人類の未来を診断した。
ハラリ氏は、「AIという問題を扱うには、人類史上かつてないほど人類の協力が切実だ。しかし、私たちは互いへの信頼を急速に失いつつある」とし、「歴史上最も精巧な情報技術を持っているにもかかわらず、互いの対話はより難しくなった」と指摘した。
ハラリ氏はこのような現象が起きた原因として「AIアルゴリズム」を指摘した。「真実探し」ではなく「ユーザーの参加度を高める」ことに合わせて設計され、AIがソーシャルメディアで虚偽の情報だけでなく、恐怖や憎悪を刺激するコンテンツを拡散すると指摘した。
「長年の経験と装置に基づいて情報の真偽を判別する(新聞やテレビなどの)レガシーメディアとは異なり、新しいメディアの世界では、真実は底に沈み、安価で見栄えの良い虚構で世界が覆われている。これは民主主義を阻害する深刻な要因だ」。
ハラリ氏は、AIがもたらすさらなるリスクを防ぐには、「信頼のパラドックスから解消しなければならない」と忠告した。
「AIの流れを先導する人々に『なぜこんなに急ぐのか』と尋ねた時、返ってきた答えは『私たちが慎重に進むと、ライバルがAI競争で勝つ可能性があるから』だった。互いが信頼できる基盤をまず築く必要がある。不信と対立から生まれたAIではなく、信頼に基づいて学習させたAIでなければ、信頼して頼ることはできない」。
ハラリ氏は、個々人が「AIをどのように使用するかについて悩む時」と提言した。食事をした後に消化する時間が必要なように、情報に触れた後に省察する時間を持つべきだということだ。
イ・ジユン記者 leemail@donga.com