大統領の権限を代行する崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官は14日、「ミョン・テギュン特検法」に対して再議要求権(拒否権)を行使した。2021年以降に実施された再・補欠選挙、総選挙、大統領選挙におけるミョン氏の関与疑惑や、その捜査過程で認知された事件を含む特検の捜査対象があまりにも広範で、憲法上の明確性の原則に反するという理由からだ。また、崔氏は、すでに裁判が進行中のミョン氏に対する公訴維持を特検が担当することも、違憲の可能性があると指摘した。
ミョン氏が接触したり世論調査を行ったりした人物の多くが与党「国民の力」所属であり、大統領選候補とされる人物も含まれている。これが与党が特検法に党論として反対している理由だ。しかし、特検法をめぐる与野党の攻防を超えて、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻の公認介入疑惑や、昌原(チャンウォン)国家産業団地の用地選定を含む国政介入疑惑、いわゆる「ミョン・テギュンゲート」は必ず解明されるべき問題だ。
金建希(キム・ゴンヒ)氏が金映宣(キム・ヨンソン)元議員の公認に関与したという疑惑が浮上し始めたのは昨年9月からだ。その後、尹氏がミョン氏に対して「(公認管理委員会に)『金映宣を(公認)してくれ』と言った」とされる録音ファイルや、金建希氏が総選挙で金映宣氏の公認と関連して「単数候補は私もいい」とミョン氏に送ったメッセージなどが次々と公開された。さらに、ミョン氏が大統領選挙の予備選当時、尹氏に世論調査を提供した見返りに、金映宣氏が公認を受けたという疑惑も提起されている。金建希氏を調査するための手がかりは十分にあるということだ。
検察は専従捜査チームを編成し、捜査を進めているように見えるが、金建希氏に関しては依然として何の動きもない。大統領室や官邸などへの家宅捜索も行われていない。本丸を放置して末端だけを追及しているのではないか、という疑念が生じる。
検察が、大統領夫妻に関する疑惑を徹底的に解明する意思があるのか疑問視されるのはこれだけではない。金建希氏が関与したとされるドイツ・モーターズ株価操作事件でも、金建希氏の容疑を立証するために検察が十分な証拠を収集したかどうかについて、憲法裁判所が「いささか疑問がある」と指摘するほど、不十分な捜査との批判が絶えない。最近の尹氏の拘束取り消しに対する検察の対応も失望を招いている。このため、戒厳事態をめぐる機関の中で検察の信頼度が最も低いという世論調査結果が出るほど、国民は検察を信頼していない。検察が大統領夫妻の疑惑を適切に捜査しない場合、最終的には特検の導入しか解決策がないという世論が高まるのは避けられないだろう。
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