Go to contents

「こぶし」で支持層だけに気を配った尹大統領、より大きな分裂を予告した苦い風景

「こぶし」で支持層だけに気を配った尹大統領、より大きな分裂を予告した苦い風景

Posted March. 10, 2025 08:45,   

Updated March. 10, 2025 08:46

한국어

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が8日午後、漢南洞(ハンナムドン)の官邸に復帰した。尹大統領は、ソウル拘置所を出る際、警護車から降りて自身の釈放を歓迎する支持者たちに向かって、何度も腰を深く曲げて挨拶し、手を挙げて振りながら拳をぎゅっと握ったりもした。官邸前に到着しても、車から降りて支持者たちと握手する場面もみられた。尹大統領は、釈放メッセージで支持層に向かって感謝のメッセージを伝え、「私の拘束との関係で収監されている方々が早く釈放されることを祈る」とも話した。

拘置所から出て官邸に復帰するまで、尹大統領は終始、得意満面で意気揚々としていた。警護車から降りて拘置所正門前の20~30メートルを歩きながら挨拶し、手を振るシーンは短いカーパレードを連想させるほどで、すぐそばにマイクさえあれば、一座の演説と「アッパー・カット」パフォーマンスでもしそうな勢いだった。実際、尹大統領は、釈放の通知を受けた直後「話したいことがある」として拘置所前で即席演説をすることを希望したが、警護処が難色を示し、口述メッセージを配布することになったという。

このような振る舞いは、より大きな国家的分裂を予告する苦々しい風景に違いない。突然の12・3非常戒厳令で国を混乱の沼に陥れ、その後もあらゆる詭弁と無理な主張で国論を二つに分断させた尹大統領だ。いくら52日ぶりの釈放に感情が激しくなり、自身を応援してくれた人々への感謝の気持ちが大きいとしても、国民全体に対する申し訳ない気持ちを超えることはできない。さらに、最後まで自分の味方だけを見て、裁判所への乱入者まで気にかけるメッセージでは、言葉を失わせる。

尹大統領は、拘束期間の算定を巡る法的是非の末に釈放されたものの、自ら犯した違憲・違法非常戒厳の責任は避けられない。憲法裁判所の弾劾審判を通じて、大統領職を罷免するかどうかが分かれ、内乱首謀罪の容疑がかけられた被告として、裁判所の刑事裁判も待っている。いかなる「承服」のメッセージもなく、正当性だけを強調する尹大統領の態度が続けば、今後、憲法裁と裁判所でどのような決定が出ても、それがもたらす国家的な後遺症は少なくないだろう。

すでに広場と街角での対立は危険なレベルに達している。たとえ職務が停止されたとしても、大韓民国の大統領なら、少なくとも国論分裂を煽る言葉だけは避けなければならない。一部からは、今回の出所ドラマを見て、尹大統領が支持層結集のために「官邸政治」を越えて「街頭政治」に出るのではないかと懸念する声まで出ている。尹大統領は慎まなければならない。少なくとも、韓国の政治史に最も政派的で分裂的な大統領と評価されてはならない。