
裁判所が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拘束取り消しの決定を下したことで、法曹界からは検察と高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の責任論が提起されている。検察は、追加捜査しようとして時間が過ぎて拘束取り消しを招き、公捜処は内乱罪の捜査権があるかどうか不明な状態で無理に事件を引継ぎ、問題を大きくしたという指摘が出ている。
今年1月23日、公捜処から尹大統領の内乱首謀容疑で事件の送付を受けた検察非常戒厳特別捜査本部(本部長・朴世鉉高等検察庁長)は、送付当日と25日に2度、裁判所に拘束期間の延長を申請したが、いずれも許可されなかった。1回目の申請が不許可になった時、捜査チーム内部では「そのまま起訴しても良い」という意見が出たという。すでに拘束起訴した共犯を調べる過程で十分に捜査記録が確保され、期限を延ばしても尹大統領が供述を拒否する可能性が高かったからだ。だが、検察は当時、「検察が直接追加捜査する必要がある」としているうちに時間が経ち、拘束期間の延長を再度申請したという。
検察は、尹大統領を直ちに起訴するかどうかを決めるため、26日午前10時、沈雨廷(シム・ウジョン)検察総長主催で最高検察庁の次長および部長、全国の高等検察庁長、地検長が参加する会議を開いた。裁判所が拘束期限と見た26日午前9時7分が、すでに過ぎた時点だった。検察は会議を終えて、午後6時52分頃になってようやく尹大統領を起訴した。
法曹界からは、現職大統領の内乱容疑を捜査する重大事件であるだけに、きわめて保守的に判断し、捜査手続きを厳しく守るべきだったという指摘が出ている。当時、尹大統領側も「被疑者の身柄拘束に関する問題は、人権侵害の問題が伴うので、保守的に運用されなければならず、『疑わしい時は被疑者の利益に』と解釈されなければならないのが刑事法の大原則だ」とし、「25日夜12時までが、尹大統領の拘束期限だ」と主張していたためだ。
公捜処も責任を避けがたいという指摘が出ている。公捜処は昨年12月9日、検察と警察に対して事件の引き渡し要請権を発動。検察は1週間後に事件を引き渡し、公捜処が尹大統領の逮捕と拘束など捜査を主導してきた。公捜処が引き渡し要請権を発動した時は、裁判所が検警との「重複捜査」を理由に国軍防諜司令部などに対する家宅捜索令状などを相次いで棄却した時だった。
当時、公捜処は、「職権乱用権利行使の妨害に関連した犯罪であるため、内乱罪も捜査できる」という論理を前面に打ち出した。だが、裁判所は「公捜処法などの関連法令に、(内乱罪捜査権に関する)明確な規定がなく、これに関する最高裁の解釈や判断もない」と認識を示した。検察官出身の弁護士は、「公捜処が無理に事件の引き継いだことで、現職大統領の捜査が最初からこじれた」と批判した。
ク・ミンギ記者 koo@donga.com