米国の愛国Ｔシャツが私たちに意味するもの

最近、米小売り大手ウォルマートの店舗で飛ぶように売れているＴシャツがある。昨年の独立記念日（７月４日）に発売されたこの服は、胸元に「ＡＭＥＲＩＣＡＮ ＭＡＤＥ」（米国製）という文字がプリントされ、下には小さな星条旗の模様が入っている。一見すると愛国心に訴える普通の「愛国」商品と何ら変わりないが、特異な点が２つある。まず、価格が１２.９８ドル（約１万９０００ウォン）で非常に安い。また、紡績、染色、縫製などすべての生産過程が実際に米国で行われた。綿の原産地ももちろん米国だ。

このＴシャツは「アメリカン・ジャイアント」という会社の製品だ。代表のベイヤード・ウィンスロップ氏は、幼い頃の郷愁を思い浮かべ、同社を設立（２０１１年）したという。ウィンスロップ氏が幼年期を送った１９７０年代までは、米国の衣料産業はかなり競争力が高く、街では品質の良い国産服を着ている人をよく見かけた。しかし、その後、グローバル化が進み、人件費の安い中国など海外に生産拠点が移り、あっという間に輸入衣料が米国市場を占領した。ウィンスロップ氏はタイムマシンを巻き戻して、今も米国が質の良い安い服を生産できるということを証明しようとした。同社は米国南部の農場とパートナーシップを結び、原材料を安価で調達し、工場の自動化で生産コストも削減した。決め手はウォルマートとの大規模な供給契約で安定した販路を確保したことで、１３ドルのＴシャツを可能にした秘訣になった。

もちろん、このような製品の成功例はごく一部に過ぎない。依然として米国で販売されている衣料の９５％以上は、海外で生産された輸入品が占めている。しかし、アメリカン・ジャイアントの「小さな実験」に米国は大いに鼓舞されている。外国に頼らず、自国内のサプライチェーンだけで製品を生産できるということを示し、それによって産業基盤を守り、雇用を創出する好例まで示したためだ。ここにトランプ２期政権が公約通り輸入品に対する関税を大幅に引き上げると、「メイド・イン・アメリカ」の競争力はより一層高まる可能性がある。企業はあえて愛国心に訴えなくても、海外製品に劣らないコストパフォーマンスの製品を消費者にアピールできるようになる。自国内ですべての生産過程を進めようとする企業の動きは、次期政権の政策基調とも１００％一致する。関税だけでなく、今後またどのようなインセンティブが第２のアメリカンジャイアントを誕生させるか分からない。

米国の製造業復活への期待は逆に、韓国にとって大きな挑戦となるのは必至だ。米国が高い関税障壁に加え、以前よりさらに緻密な供給網で鉄壁を築いた場合、韓国企業が巨大な北米市場に食い込む隙間はますます狭まるからだ。最近、韓国は最大市場である中国への輸出が鈍化し苦戦しているが、昨年米国への輸出は過去最大の黒字を記録するなど好調だった。しかし、状況は急変している。トランプ氏は、保護貿易とリショアリング（海外進出企業の本国回帰）政策だけでなく、自国内の生産が難しい核心産業は、韓国のような同盟国を圧迫し、米国内に工場を建設するよう圧力をかけている。米国に安全保障を頼るしかない韓国としては、このような要求を露骨に無視するわけにはいかない。就任もする前に隣国に領土を明け渡すとまで脅した人物だ。

韓国企業はこのような米国発の悪材料に加え、中国の低価格商品の攻勢という二重の困難に直面している。中国製の津波に内需市場が飲み込まれ、米国など海外市場の販路まで封鎖されれば、単なる貿易危機にとどまらず、ややもすれば産業基盤の崩壊を懸念せざるを得なくなる。このように対外環境は日増しに悪化の一途をたどっているが、これに耐えなければならない国は依然として迷走している。企業にとって、いつにも増して不安な一年が始まった。