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現代民主主義に警鐘を鳴らす古典の知恵

Posted July. 20, 2024 08:51,   

Updated July. 20, 2024 08:51


アリストテレスは古代アテネで自身の学問を開花させたが、民主政に対しては否定的だった。愚かな民衆によって共同体の利益が損なわれる可能性があると考えたからだ。アリストテレスは著書『政治学』で、「1人または少数あるいは多数の『私的な利益』を図る政治体制は、歪んだ形の体制」と述べる。そのうえで、たとえ1人支配であっても、共同体全体の利益を追求すれば正常な政治体制だと主張する。

政治学者である著者は、民主主義を扱った西洋の主要な古典を厳選し、核心的な原文(英語および韓国語翻訳)を本にまとめた。古代のヘロドトスから現代のシュンペーターまで、約2000年にわたる珠玉の著作を網羅している。

新刊で取り上げたアリストテレスの民主政批判は、一見全体主義を擁護する詭弁に聞こえるかもしれないが、実は現代民主主義に示唆するところが少なくない。民衆を扇動して私的利益を図る「ポピュリズム」に対する警戒として読むことができるからだ。実際、アリストテレスは古代ギリシャでポピュリストを意味する「デマゴゴス(demagogos)」を民主政治の敵と規定した。アリストテレスは『政治学』で、「民衆が法の上に君臨する民主政では、デマゴゴスが富裕層と戦争をして国を二分する。穴の開いた桶に水を注ぐように民衆に生産余剰を分配する『無節制(aselgeia)』に陥る」と指摘した。すでに2000年以上前に「福祉ポピュリズム」の弊害を予見していたのだ。時代を超越した古典の洞察力を味わいたいなら一読を勧める。


金相雲 sukim@donga.com