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「サムムウォン」会社員たちの心の中にも炎はある

「サムムウォン」会社員たちの心の中にも炎はある

Posted June. 07, 2024 08:43,   

Updated June. 07, 2024 08:43

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会社に通う理由はいろいろある。生計を立てるため、自己実現のため、社会への所属感と組織に貢献するという効能感を感じるためなどだ。韓国の場合、次の世代に行くほど生計維持を除いた無形の理由が急速に価値を失っている。

特に大企業ではより高い給料が第一の目的となっている。1円でも給料が高い会社に転職することを躊躇せず、同時に、1円でも給料の支払われない労働は絶対やろうとしない保身主義が広がっている。会社員の間では「サムムウォン(三星+公務員)」、「給料ルパン」(仕事をせず勤務時間を過ごす人)という自嘲的な表現もよく使われる。

三星(サムスン)電子の元社長は定年後、若いサラリーマンに会う度に「会社に行きたくない」という話をよく聞くという。その度に「彼らの心の中にも明らかに炎があるのに、会社がそれを点火してあげていない」と思ったという。

イ氏が三星で目撃した花火の一例はこうだ。22年、三星電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長(当時副会長)とビル&メリンダ・ゲイツ財団(ゲイツ財団)の理事長が力を合わせて、開発途上国向けのトイレプロジェクトに成功した時だ。三星の社会的価値(SV)を広めるためのプロジェクトの一つとして、下水処理を必要としないトイレを開発したのだ。

初期に三星からこのプロジェクトに選ばれた役職員たちは、会社の核心業務から外れた仕事を任され、やる気も失っていた。半導体やスマートフォン工程ではなく、人生で初めてやってみる下水処理研究には難関が絶えなかった。だが、内部で「三星がやれば違うということを見せよう」という督励が広がり、約2年で実際に使える製品を出すことに成功した。

当時、理事長のゲイツ氏が感激し、李会長に何らかの形で感謝の意を伝えたいと言い、李会長は「では理事長が直接社員たちを励ましてください」と話した。ゲイツ氏は快く受諾し、当時はパンデミックだったので、関係する研究員全員を集めてビデオ通話で直接感謝の意を伝えた。当時、研究員たちは「仕事が終わると、いつも下水の臭いをさせて家に帰って、子供たちになんと説明すればいいかわからなかったが、ビル・ゲイツ氏が励ましてくれたと言ったら、誇らしい父親になった」と話した。

このケースから3つの炎を確認することができる。「三星がやれば違うということを見せよう」という構成員の誇りと「世の中に貢献する」という効能感、そしてこれを「李会長とビル・ゲイツ氏に認めてもらった」というプライドだ。

会社はお金を稼ぐために集まった集団だが、結局、人が集まる社会でもある。米国の作家でジャーナリストのシモーヌ・ストルゾフ氏は、現代の会社員の様相を分析した著書で「社会的・宗教的つながりが弱まるにつれて、会社こそ多くの人々の一次的な社会集団になった」と書いている。親族共同体が弱まり、宗教活動の割合も低くなり、現代人にとって会社の重要性が次第に大きくなっている。

しかし、逆説的に会社が成長すればするほど、初期構成員が持てたプライドと効能感は薄れていく。今日、社員たちが会社に対する情熱を失ったのはここから出発する。サムムウォンの怠慢と貴族組合の保身が横行する現実で、会社はもう一度構成員の心をつかむための炎を考えるべきではないだろうか。