「一度でもがたつけば、キューバ当局がすぐに背を向けそうだった」
政府消息筋は15日、キューバとの14日夜の国交樹立までの秘密交渉の過程について、このように伝えた。キューバが国交樹立交渉の事実が北朝鮮に知られると、北朝鮮が激しく反発することを懸念し、国交樹立交渉をしていることを外部に漏れないよう強く要請したためだ。同消息筋は、「このため、007作戦のように行われたセキュリティ維持が交渉同様に大変だった」と吐露した。
米ニューヨークのキューバ国連代表部は5日(現地時間)、韓国代表部に電話で「国交樹立」を提案した。その後、韓国当局は、キューバ当局と緊密に連絡を取りながら、国交樹立関連の外交書簡をいつ交わし、何時何分に公表するかまで、キューバと協議したという。
ニューヨークの国連代表部で交渉が行われ、書簡を交わしたのも、キューバ側が首都ハバナで代表団と直通でつながり、秘密裏かつ迅速に国交樹立を進める場所だったからだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は旧正月の連休中にキューバとの最終合意結果の報告を参謀から受け、承認した。
● キューバ、昨年「一度会おう」と言ったが、国交樹立は慎重
韓国が、1959年のフィデル・カストロ共産党政権の登場後、交流が断絶されたキューバに初めて国交樹立を打診したのは2014年頃だった。朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代の16年、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官がキューバを訪問したこともある。
しかし、何度扉を叩いても、キューバの反応は大きく変わらなかった。政府関係者は、「いつもキューバ当局は『話せば聞いてはみるが、答えを出すのは難しい』というような反応だった」と話した。キューバ当局の変化が感じられたのは昨年だった。尹政府は発足後、キューバとの国交樹立を打診したが、昨年初め、キューバ当局から『一度会おう』という返事が来たという。その後、特に昨年下半期に集中的に水面下の交渉が続いた。大統領室関係者は、「昨年、外交部長官がキューバ側の高官と3回接触した」とし、「駐メキシコ韓国大使がキューバを訪問し、当局者と協議した」と話した。大統領室は、キューバで災害が発生した際、積極的に人道的支援に乗り出すなど、非政治分野の交流も同時に活性化し、友好的なムードを続けてきたと説明した。大統領室関係者は、「昨年12月、(キューバの)ハバナ映画祭を機に韓国映画特別展を開催し、友好的なムードも醸成した」と話した。
にもかかわらず、キューバは国交樹立の提案に「他の考慮事項がある」とし、当面は難しいという考えを示したという。その後、キューバは5日、国交樹立を突然提案し、その後、セキュリティがさらに強化された。韓国の国連代表部の中でも黄浚局(ファン・ジュングク)大使を含む3人だけが内容を共有したという。特に、キューバ側は韓国側と交流するたびに、韓国メディアなどを通じて内容が漏れることを懸念したという。政府消息筋は、「関係当局者らは、国交樹立までセキュリティ電話を使用する時も慎重だった」と話した。
14日夜、正式に国交樹立の事実を知らせる前にはエンバーゴ(情報解禁日時)がかけられ、事前の資料提供もなかった。これも、キューバ側が国交樹立直前まで慎重を期したためとみられる。
● トランプ前大統領の再選を念頭に韓国と手を握った模様
キューバは、北朝鮮と1960年の国交樹立後、軍事交流まで続け、「兄弟国家」として友好国を自認してきた。北朝鮮の激しい反発が予想されたにもかかわらず、キューバが韓国に手を差し出したのは、深刻な経済難が決定的な要因であると推測される。
革命の立役者であるカストロ兄弟の統治が2018年に正式に幕を下ろし、ミゲル・ディアスカネル大統領が権力の座に就いたが、キューバの経済難は依然として続いている。政府関係者は、「国内的には経済難の打開策が見えないため、外部に目を向け、韓国が目に留まったのではないか」と話した。そして、「昨年会ったキューバ当局者が、韓国の自動車、重工業産業についてよく知っていて驚いた」と語った。
キューバの国交樹立提案が、11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が再選する状況を念頭に置いて決定したという見方もある。トランプ氏が再選した場合、米国の制裁圧力が非常に強まる可能性が高いため、急いで別のルートを探して韓国の手を握ったということだ。実際、キューバはオバマ政権当時、米国との関係が改善され、15年に4%の経済成長を達成したが、その後、トランプ氏が就任し、両国の関係は悪化した。
申晋宇 niceshin@donga.com
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