
「シリコン(半導体を意味する)からサービスまで、人工知能(AI)のすべてをオーダーメード型で提供する」
マイクロソフト(MS)は15日(現地時間)、米シアトル本社で開かれた例年の行事「イグナイト」で、独自に開発したAI半導体と中央処理装置(CPU)をそれぞれ公開し、このように明らかにした。米NVIDIAが圧倒的なシェアを占めているグローバルAI半導体市場に、グーグルとアマゾンウェブサービス(AWS)に続き、MSまで加わることになる。米巨大IT企業のAI半導体の開発競争が本格化し、大規模な生産力量を備えた三星(サムスン)電子とSKハイニックスなど、韓国企業も恩恵を受けるだろうという見通しが出ている。
MSが同日発表したAI半導体「MAIA」は、NVIDIAのグラフィック処理装置(GPU)と同様の役割をする。オープンAIの「チャットGPT」やMSの「ビング」など、生成型AIの土台である大規模言語モデル(LLM)を学習させ実行するデータセンターのサーバー駆動のために欠かせない半導体だ。これと共に、MSは英半導体設計企業アーム(Arm)基盤の低電力CPU「コバルト」も発表した。コバルトは、クラウド(遠隔サーバ)の性能効率を高める役割を果たす。MSは、来年初めからデータセンターに独自のAI半導体とCPUを順次適用することにした。
MSがAI半導体の開発に乗り出した最大の理由は、最近、製品の供給が需要に追いつけず、コスト負担もますます高まっているためだ。チャットGPTのブームなどで、生成型AIサービスが急速に拡大し、より多くのAI半導体が必要になっている。米CNBCによると、NVIDIAの高性能GPU「H100」の価格は、1個当たり4万ドル(約5200万ウォン)だ。最高レベルのサーバーを構築して生成型AIサービスを提供するためには、GPUが数千個も必要となる。エヌビディアは世界中のGPU市場の90%以上を占めており、AI半導体価格を事実上左右している。
他の巨大IT企業は、エヌビディアの市場独走によるAI半導体の供給不足と値上げに備え、独自に開発を推進してきた。グーグルは8日、自社の最新AI半導体「TPU v5e」をスタートアップ・アンスロピックのLLM「クロード」に適用すると発表した。グーグルは、ライバル会社のMSと同盟関係のオープンAIの代わりにアンスロピックに投資し、密接に協業している。アマゾンも、クラウド系列会社のAWSを通じて、2013年から独自のAI半導体を披露している。
巨大IT企業は、NVIDIAなどの汎用AI半導体より、独自に開発した製品を活用するのがより効率的だと判断している。半導体の設計が微細に変わっても、電力消耗量とデータ処理速度で大きな差を見せる。MSなどは、各社が保有しているAIサービスに最適化された「オーダーメード型」半導体を設計し、電力消耗量を低くしてデータ処理速度を高めることを目標にしている。MSのブライアン・ハリー技術フェローは、「半導体の設計からサービスまで、『垂直統合(Vertical integration)』でAI性能と効率性を大幅に高めることができる」と話した。
韓国国内業界からは、MSやグーグルなど巨大IT企業のAI半導体の独自の開発競争が、短期的には新しい機会につながるだろうという分析が出ている。ただ、長期的に巨大IT企業が半導体の生産力量まで備えることになれば、韓国企業には大きな脅威になりかねない。
LLMを学習させ、AIサービスを提供するためには、三星電子とSKハイニックスが生産する高帯域幅メモリ(HBM)などのメモリ半導体も一緒に搭載されなければならない。現在、グローバルHBM市場で1位の事業者はSKハイニックスで、50%のシェアを占めている。2位の三星電子は40%のシェアでその次となっている。マイクロンのシェアは10%で、韓国半導体企業との格差が大きい。
Dラムを垂直に積み上げたHBMは、構造が複雑で作りにくいが、性能が従来より大幅に改善され、電力消費量が比較的少ない。資料の演算と保存を休む間もなく繰り返すAIサービスに欠かせない製品だ。
さらに、巨大IT企業が独自に開発したAI半導体の大量生産は、三星電子のようなファウンドリ(半導体の受託生産)企業に任せる可能性が高い。グローバルファウンドリ市場2位(シェア11.7%)の三星電子が、巨大IT企業のAI半導体の生産受注を獲得すれば、トップのTSMCを追撃する足場になるだろうという見方もある。
MSの恒例行事のイグナイトの現場には、4500人余りの開発者とAI専門家などが参加し、オンラインで17万5000人余りが事前登録を終えるなど、大きな注目を集めた。MSは、イグナイトを通じて新しいAI関連技術とサービス、政策など100件余りを発表した。AI技術を通じて自動的に文書を作成、要約できるMSの「コパイロット」(副操縦士)は、来月1日からウェブブラウザ「エッジ」と運営体制(OS)ですべてのユーザーが使えるよう公開することにした。