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端正で輝く人生の中の文章

Posted October. 07, 2023 08:49,   

Updated October. 07, 2023 08:49


今年のノーベル文学賞受賞者にノルウェーの作家ヨン・フォッセ氏が発表された時、最初に感じたのは戸惑いだった。1年が経ったが、昨年の受賞者であるフランスの女性作家、アニー・エルノー氏の作品もきちんと読んでいなかったためだ。文学担当記者としての罪悪感(?)を解消するために本棚を開いた。

『戸外の日記」は文字通り、エルノー氏が外を記録した日記形式の文章だ。「あまりにも慣れ、ありきたりで、些細で意味を欠いているように見えるすべてのもの」というエルノー氏の説明のように、1985年から92年まで彼女が見た日常を風景画のように捉えた。しかし、「集団の日常を捉えた数多くのスナップ写真を通じて、ある時代の現実に近づこうとする試み」というエルノー氏の言葉通り、現状を超えた時代を見ようとする努力が際立っている。

「道にチョークで枠を描いた場所があり、『食べるものがありません。私には家族がいません』と書かれていた。しかし、そう書いた男あるいは女は去り、チョークで引いた円の中は空っぽだった。人々はその中を踏まないように避けて歩いた」。

エルノー氏は86年、フランスのパリのある駅の風景をこう描写した。おそらくホームレスは駅で物乞いをするために、チョークで自分の空間を意味する円を描いたのだろう。そして、何らかの事情でその場を離れたのだろう。しかし、それでも人々は円の中に入ろうとしない。貧困の近くに行くことを嫌うからだ。ホームレスは去ったが、ホームレスの場所はそのまま残っているのだ。

「男が若い女性に尋ねる。『週に何時間働くの』『何時から働き始めるの』『休みたいときに休めるの』。ある職業の長所と短所を評価する必要性、生活の具体的な現実。不必要な好奇心、無味乾燥な会話ではなく、他の人がどのように生きているのかを知ることで、自分がどのように生きるべきか、あるいはどのように生きることができたのかを知る。

エルノー氏は87年、パリのある広場で男女の会話を耳にした。2人は恋人なのか、友人なのか、関係はわからないが、会話は今韓国で行われても違和感がない。他人の職業についていちいち聞く人々の心理をエルノー氏は断片的に分析する。他の人の職業を尋ねる時、自分はこのような心を抱いていたのか自問自答することになる。

形式的な面では、観察する主体を説明する主語がない点が際立っている。「私的な体験に普遍性を与えようとする狙い」という翻訳家チョン・ヘヨン氏の分析のように、個人的な経験を通じて社会構造を掘り下げるために、この文章を誰が書いたのかを区別していないのだ。普段「直接体験していないフィクションを書いたことは一度もなく、これからもそうだ」と断言していたエルノー氏らしい選択だ。

「ノーベル文学賞受賞作が思ったより売れない」と言っても、昨年受賞直後に国内で出版または再刊行されたエルノー氏の本は7冊だ。今年のノーベル文学賞受賞作だけでなく、過去の受賞者の作品も読んでみてはどうだろうか。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com