
パンソリの5つのマダン(曲)のうち、水宮歌から取った「虎が降りてくる」で世界的なヒットを記録したバンド「イナルチ」が、3年ぶりに新曲で帰ってきた。29~30日、ソウル江西区(カンソグ)のLGアートセンターソウルで開かれる公演「海の底」で公開する予定だ。最近、一部の舞台で公開した「ヒヒハハ」を含め、未発表曲「太初の惑星」「凶暴な噂」「ビンビン」など11の新曲を歌って演奏する。
「海の底」の公演で披露する曲は各々別に存在するが、中心には一つのストーリーがある。生命の源である海の底を訪れる天文学者の旅程が盛り込まれたものだ。ウサギの肝を探しに陸地に出てきた鱉主簿の物語からモチーフを取ってきた1回目のアルバムとは異なり、「海の底」の公演で公開する予定の新曲は、パンソリの5マダンとは完全に関係のない内容だ。19日の記者懇談会で、リーダーのチャン・ヨンギュ(ベース)は、「イナルチの音楽ではパンソリの割合がかなり大きいため、5つのマダンの他の作品を活用しようかと悩んだが、『今』できる話で音楽を作ることが、イナルチが今後進むべき道だと結論付けた」と話した。
公演は、イナルチの曲にパク・ジョンヒ演出が構想した天文学者の物語を付け加える方法で構成する。歌と歌の間は、アニリ(パンソリで自由な拍子で私説を語る技)で埋める。巨大で深い空間感を生かすために、3~4メートルの深さの後ろ舞台を全て使う。
イナルチは、今回の公演の曲で来年上半期に2枚目のアルバムを発売する。興をそそるリズミカルなベースと中毒性のあるサビが長所である既存の「イナルチのスタイル」を生かすものの、夢幻的な感じを与えるロック音楽にエレキ音を加えた。ボーカルの歌い方も変わった。歌い手の4人がハーモニーを奏でるために、パンソリの技巧を捨てたり、裏声やささやきのようなパンソリにはない唱法も駆使する。
先月、英国やベルギー、オランダ、ハンガリーなどで初めてのヨーロッパツアーを終えたイナルチ。「珍しく慣れて、美しく見慣れない」(BBCラジオ)、「声が音と音の間を滑るように行き来する」(英国出身の有名プロデューサー、ブライアン・イーノ)のような賞賛があふれた。メンバーのイ・ナレ(ボーカル)は、「私たちの伝統を守らなければならないという使命感よりは、イナルチの中で各自の音楽について自由に悩むバンドになりたい」と話した。3万~7万ウォン。
李知訓 easyhoon@donga.com