先週、フランス・パリで乗っていた地下鉄が、突然コンコルド駅で止まった。その瞬間、すべての客車の電気が消え、乗客は当惑した。停電なのか、テロでも起こったのか、不安に思っていると、「車両を乗り換えてください」とアナウンスが流れた。前の車両から煙が出て、点検が必要だという説明だった。周囲の人々は、「停電のようだ」と言って、急いで電車を降りた。立ち寄ったパリのあるレストランでも、夕方の営業が始まる直前、停電になってしまった。レストランのオーナーは、「今日は営業できない」と店を閉めた。
猛暑で大小の電気事故が相次ぎ、フランス人もエネルギーの重要性を体感している。このような中、ロシア国営ガス企業のガスプロムは11日から10日間、ドイツを通じて欧州国家に供給されるガスを全容量の40%に減らし、27日からはさらに20%まで削減した。ウクライナに侵攻したロシアが、西側の制裁を受け、ガスの供給を握って逆攻勢に出たのだ。
このため欧州では、今冬「ロシアン・ウィンター」が到来するという恐怖が大きくなっている。ロシアン・ウィンターとは、本来はロシアを侵略したフランスのナポレオンやナチスドイツのヒットラーを実質的に退陣させたロシアの冬将軍をいう。最近では、ロシアが引き起こした欧州の厳しい寒さという意味で使われる。ロシアがガス管を閉め、欧州を苛酷な寒さで震えさせるということだ。
危機感が高まった欧州連合(EU)は、加盟国にガスの消費量を15%まで減らすよう提案した。欧州国家は、EUの提案で動き始めた。フランス政府は、全国すべての商店に「エアコンや暖房を稼動する時は必ずドアを閉めて営業するよう通知した。これを破った自営業者は、最大750ユーロ(約100万ウォン)の罰金が科される。自営業者らは、「今冬に停電が発生すれば、一定の時間帯の営業を停止しなければならないかもしれない」と話している。
世帯所得の10%以上をエネルギーに使う「エネルギー貧困層」の割合が全世帯の25%に急増したドイツの地方政府は、脆弱階層のために共同暖房区域を指定している。ショッピングセンターでは、停電に備えて木材や石炭を購入する人々が増えている。
欧州国家もこのような対策が抜本的な解決策ではないということを知っている。いくらエネルギー消費を減らしても限界がある。素早い国家は、長期的なエネルギーの安全保障のために、中東やアフリカの資源大国から天然ガスやこれに代わる原油の供給を取り付けている。
18日、アラブ首長国連邦(UAE)とエネルギー関連協議をしたフランスのマクロン大統領は、軽油の供給を要請したという。この時、アンワル・カルガシUAE大統領補佐官(外交担当)が記者団にした話が注目される。「40年間、極東地域に石油を売ってきたが、危機局面の今は石油を欧州に回している」。韓国の5位の原油輸入国であるUAEが、アジアに供給してきた原油を欧州国家に回せば、国内の原油需給が不安になりかねない。
欧州の大国は、長年きずなを結んできたアフリカ国家から各種資源を購入しており、資源需給が比較的安定的だ。にもかかわらず大統領まで「エネルギー営業」に奔走し、資源の販売網を変えている。このような欧州と比べて、「資源貧国」韓国は切迫感を持ってエネルギー難に備えているのだろうか。競争国の攻撃的なエネルギー外交に押されないよう韓国政府も努力しなければならない。