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作家の密かな読書

Posted March. 30, 2022 08:41,   

Updated March. 30, 2022 08:41

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ドストエフスキーの国が戦争をしている。このような時、彼が召集されるのは当然のことかもしれない。ドストエフスキーは偉大な作家だったが、理念的には国粋主義者に近かった。ポーランドと関連しては特にそうだった。ポーランドの領土だったウクライナのヴェルディチェフで生まれた英国の作家ジョゼフ・コンラッドがドストエフスキーを嫌ったのはそのためだった。

ポーランド人に対するドストエフスキーの態度は不信を越え、嫌悪に近かった。ドストエフスキーはポーランド人をあからさまに嫌い、ポーランド人がロシアに移住することに強く反対した。ドストエフスキーは、ポーランド人がロシアに来てすることは、ロシアを憎み、裏切ることしかないと暴言を浴びせた。ロシアがオーストリア、プロシアと共にポーランドの領土を切り裂いた歴史は眼中になかった。

ドストエフスキーの偏見は小説にも投影される。『カラマーゾフの兄弟』で、ポーランド人は露骨に滑稽に描かれる。ポーランド人は裏切り者、詐欺師として扱われる。グルーシェンカというロシア人女性を裏切って去ったポーランド人将校は、金目当てにグルーシェンカを再び誘惑しようと戻って来る詐欺師だ。この将校は、賭けトランプで、同行したポーランド人と組んでロシア人の金を奪おうといかさまをはたらく。ポーランド人女性の描写はもっとひどい。女性たちは、ロシア兵士と踊りを踊ったら「猫のように膝に座る」尻軽女と描かれる。

弁解の余地のない偏見だ。しかし、個人的にそのような偏見を持ったからといってドストエフスキーの小説が偉大でないというわけではない。『カラマーゾフの兄弟』は小説になった聖書と言えるほど奥が深く、感動的な愛と歓待の話だ。なぜこのような矛盾が生まれるのだろうか。偏狭で偏向で人間的に完璧でない人からも高貴で奥深いものを引き出すのが芸術の属性だからだ。偉大なものは、それゆえ芸術家でなく芸術なのだ。コンラッドが表向きにはドストエフスキーを「憑りつかれ、しかめっ面の人」と言って軽蔑しながらも、ドストエフスキーの小説を隠れて読んだ理由だ。誰にも分からないように。

ワン・ウンチョル 文学評論家・全北大学碩座教授