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現場が教えてくれるもの

Posted August. 30, 2021 09:14,   

Updated August. 30, 2021 09:14

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「それ(旅行記)は、旅の成功という目的のために家を出た主人公が、様々な試練を経験し、本来達成しようとしたことと違う何かを得て出発点に戻ってくることだ」(金英夏の「旅の理由」)

私は見知らぬ場所で新しい人に出会い、慣れない環境に慣れるのが嫌だ。毎日同じように繰り返される安定した生活を送りたい。しかし、私が選んだ「壁紙貼り職人」という職業は、毎回新しい環境に投げ出される仕事だ。長ければ3カ月、短くは1日や2日ずつ働き、別の場所へ移動することが絶えず繰り返される。新しい出勤の風景、新しい現場風景、新しく出会う人々、新しい家の構造と新しい壁紙…。壁に壁紙を貼るのはいつも同じだが、それ以外はすべてが変わる。3カ月ずつ滞在する現場は慣れる機会でもあるが、そのような機会さえ生じる前に去らなければならない現場も多い。

しかし、すべての現場に同じものが一つある。「仕事が終われば、自分に変化が生じる」ってこと。それは初心者である私には「成長」であることが多い。壁紙の技が伸びたりもするが、新しい環境への対処法を学び適応する自分ならではのノウハウも生まれる。住所名のない現場の見知らぬ道を早く記憶するコツ、新しい人々の間で気後れしないための自分ならではの行動、突発状況に毅然として対処する心構えなど…。働くために新しいところに行くのではなく、新しい環境で素早く適応すること自体が仕事の一部ではないかと思うこともある。

どの現場にいつ行くかはあらかじめ知ることもできない。急に翌日、地方出張に行くよう連絡を受ける時もある。事前に知らせることはできなかったのかと文句を言うことも、日程を変えることもできない。ただ急いで荷造りをするだけだ。今回の現場ではどんなものを得られるか、小さな期待をしながら。