

昔々、東海の龍王の息子が神僧を訪れ、新たに暮らす場所を尋ねた。神僧は、足を止める所はまさにあそこだと話した。龍王の息子が旅立つと、魚の群れが彼の後についた。ある寺院で止まった龍王の息子は、大きな弥勒石に変わり、彼に従った多くの魚も大小の石に変わった。慶尚南道密陽(キョンサンナムド・ミルヤン)万魚寺にまつわる伝説だ。
最近、『軒先の風景が私に尋ねた』(タムアンドブックス)を出版した作家ペ・ジョンフンさん(46・写真)は、寺院スケッチ旅行中、最も印象深かった所として万魚寺を挙げた。そして「あなたを待つことができて幸せです」と題する作品と共に、「釈迦生誕の日、その日が来れば、長い眠りから覚めたように龍王の息子も魚も私たちも悟りを得るだろう」と書いた。
同書には、京畿道坡州(キョンギド・パジュ)の普光寺、忠清南道瑞山(チュンチョンナムド・ナムソサン)の開心寺と浮石寺、全羅南道和順(チョンラナムド・ファスン)の雲住寺と万淵寺、江原道襄陽(カンウォンド・ヤンヤン)の洛山寺、慶尚北道盈徳(キョンサンプクト・ヨンドク)の莊陸寺など寺院29ヵ所の風景と記録が載っている。
中学の国語教師でもある作家は、時々ここを旅行して記録したイラストレーターであり漫画家、旅行作家、「テンプル・スケッチャー(temple sketcher)」として活動している。テンプル・スケッチャーとは、寺院と関連したドローイングコンテンツやエッセイを記録する人をいう。
作者は、2019年初めから絵を描く道具とカメラを手に、月1度、寺院の隠れた美を求めて旅に出る。「本で紹介された寺院は、3、4回訪れ馴染みのなる場所だ。寺院が最も美しい時期に訪れようと努めた。新型コロナウイルスで人がほとんどいない寺院の内面を見ることができたことは、予想しなかった贈り物だった」
一時、美術と教職のいずれか進路をめぐって悩んだ作者は、別途に絵の勉強はしなかった。2004年に教師になる前に勤めた職場で起きたエピソードを漫画にした『ネクタイをなびかせて』が処女作だ。「絵であれ文であれ地道にすることが一番良い方法だ。絵は繰り返すほど良くなる。SNSに作品を載せて読者と意見を交わせば、途中であきらめずに作業する力を得ることができる」と作者は助言した。
今後6年かけて寺院100ヵ所の作業をするのが目標だ。作者は、寺院旅行の楽しみをこのように話す。
「焦った心は、一柱門を通過する瞬間消えてなくなります。歩みは自然に遅くなり、普段は気に留めなかった木や岩、土、そして小さな虫まで目に入ってきます。・・・もしかすると、釈迦がかけた魔法かもしれないという気がします」
金甲植 dunanworld@donga.com