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詩人の本屋には懐かしい物語が貯まる

Posted July. 10, 2021 07:45,   

Updated July. 10, 2021 07:45

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詩人の著者が出した詩集専門書店「ウィット・アンド・シニカル」。今年で5年目になった。2016年にソウル西大門区新村(ソデムング・シンチョン)駅前にオープンし、2018年に鍾路区昌慶宮(チョンノグ・チャンギョングン)路のトンヤンショリムの2階に移転した。ぎっしり詰まったのは詩集だけではない。そこで会った人々の物語が盛り込まれている。

本のページごとに期待に満ちた一日一日がにじみ出ている。賑やかでなくても、流しておいた音楽だけが一杯になった本屋の隅々を見ても著者は幸せを感じる。本屋を訪れる人々は嬉しい。

このような小さな断想を40の散文で編んでいる。お土産として受け取り、エアコンにかけておいた風鈴の音が周辺と調和する。本屋を訪れ、滞在する人々にコーヒーを入れて渡すマグカップで、一日分の愛情を考えたりもする。本屋の照明、音楽、本屋に上がる時に歩く螺旋階段など、毎日日常で感じる感情を親しい知人に話すおしゃべりのように静かに話した。

「依然として多くの人が螺旋階段を好む。誰かが階段を上がる時、彼の頭頂部から顔、胸と腰の順に現れ、ついに詩を好む読者の完全な姿を現わす時、依然として私はこの世にいない神秘を目撃した気持ちにとらわれる。その気持ちは、訪ねてくるときと逆の順で、彼がいなくなっていくときも同じだ」。

本屋の店員は「渡したのは詩集だけだが、いつも本代以上のものをもらってきた」と話す。指でクリックするだけで家に、職場に本が配送される時代にも、いつも懐かしいのは人だ。本を媒介として出会った人との交感。

それで、この本屋で最も多いのは本ではなく、人々の質問だという。雨のある日、両目が腫れぼったい人がやってきて、「薬になる詩集はあるか」と聞かれた時、本屋の担当者はキム・ヨンテク詩人の詩集を渡す。「本屋番人の詩集はどこにあるのか」というのが一番嬉しい質問だという率直さもにじみ出ている。

本だけが残った静かな時間に、本屋の番人は本を拭いてほこりを払い、抱きしめて、人々が置いて行った話を読む。

「もう来ない、相変らず訪ねてくる、これから訪ねてくる彼らに、相変らず世の中のどこかに一つくらい、になりたいのです。ずっとあなたが忘れていった話が読めるようにね」


鄭盛澤 neone@donga.com