
音楽Tシャツに夢中な人がいる。愛好家のぺク・ヨンフン氏(50)だ。最近ついにTシャツコレクションを扱った本「音楽を着る」(ブリックス)まで出版した。ジミ・ヘンドリックスからデビッド・ボウイまで、様々なミュージシャンの物語、いくつかの公演を見た経験とTシャツを集めた過程を盛り込んだ。
11日、ソウル鍾路区(チョンノグ)にある出版社のオフィスで会ったぺク氏は、「Tシャツを口実に、私が積み上げてきた音楽の物語を好きなだけ書き記しかった」と語った。
「音楽を着る」は、彼の最初の本。長い間の夢を成し遂げた。一時ラジオDJを志望したが、現実には、情報技術(IT)企業の従業員だった。LG電子、EMC、ダッソー・システムズで広報・マーケティングの仕事をしながら、社報に筆名「白雲山」などで映画や音楽のレビューを載せることで満足していた。現在は韓国オラクルの常務だ。
彼が本格的に音楽Tシャツのコレクションに乗り出したのは1995年。パット・メセニーの来韓公演の時からだ。本人の現在の所蔵だけでも350着ほど。他の人にプレゼントしたものまで含めれば500着はある。月平均約1.5着買ったことになる。
「365日、音楽Tシャツだけを着ても十分なほどですね。ほかの服に気を遣う暇などありません」
着て出かけるTシャツを選ぶことは、彼にとっては幸せな悩みだ。しかし、奇抜なデザインが多い音楽Tシャツは、出勤できる服装ではない。在宅ビデオ会議の時によく着るという。
「先日は、メタリカのTシャツを着て、グローバル会議に出席しました。アジア太平洋地域の仲間の何人かが別途にメッセージを送ってきましてね。『おい、さっき君が着ていたTシャツはうれしいよ。私もメタリカが好きなんだから!』って」
彼は、季節ごとに段ボール箱8個分の300枚のTシャツに乾燥剤を入れる。韓国ミュージシャンのTシャツも集める。ABTB、ジェットコースター、デリスパイス、セイスミ、イナルチ…。彼は、「Tシャツについての私の所有欲は、そのミュージシャンについて記録したいという欲求と繋がっている」と話した。今回の本を出発点として、音楽専門ライターの道を歩むことが目標だ。本にバンドABTBのロングインタビューを載せたのもそのためだ。
「海外に比べても遜色のない素晴らしい韓国バンドが、市場の状況のせいでスポットライトが当てられないことはとても残念です」
インターネットオークションの発達により、お金さえあればどこでも何でも買うことができる世界だが、ぺク氏の基準はしっかりしている。価格で言えば、1着当たりの心理的マジノ線は5万ウォン台。経験と記憶こそが本物の黄金だ、というのが彼の持論だ。
「一番のお気に入りは、2012年に京畿利川(キョンギ・イチョン)のジサンバレーロックフェスティバルで買ったレディオヘッドのTシャツです。舞台と演奏があまりにも素晴らしくて。忘れることができません」
「あの場所こそ、私がいるべき場所だという確信ができました」(46ページ)
イム・ヒユン記者 imi@donga.com