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音楽都市がサッカーで優勝した時

Posted July. 03, 2020 08:33,   

Updated July. 03, 2020 08:33

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「音楽とサッカーは両方共感情(emotion)だ」

最近、イングランド・プレミアリーグ(EPL)のトップについたリバプールのユルゲン・クロップ監督(53、ドイツ)が、球団チャンネル(LFCTV)とのインタビューで語った言葉の中で目についた部分だ。この言葉が出るようになったのは、リバプールという都市についてどう思うかという質問が出た時だった。彼は、「リバプールは、音楽の街であり、サッカーの街だ」としたうえで、このように答えた。この回答に次ぐ複数の説明が、クロップ監督の「サッカーへの考え方」を示していると考えた。

リバプールが音楽の街と呼ばれることは広く知られている。英国が生んだ世界的なグループ、ビートルズのメンバーたちの故郷であり、ビートルズが結成されたところである。依然としてビートルズ関連観光商品が満ちた所であり、ビートルズのほか、多くのミュージシャンを育てたところである。

これに加えて、リバプールがサッカーの街と呼ばれることも事実だ。この30年間優勝できず、長い間低迷を経験したが、ここを本拠地とするリバプール球団は、一時「赤い帝国」と呼ばれてイングランドと欧州サッカーの舞台を号令した。リバプールは今回の優勝で、19回目にイングランドプロサッカーのトップについた。長い間、無冠の歳月を送っても、マンチェスター・ユナイテッドのイングランドプロサッカー最多優勝記録(20回)に迫っていることだけを見ても、過去の栄光がいかに華やかだったかが分かる。

音楽は聴覚中心だが、サッカーは視覚中心と言える。音楽自体は、建築や絵画、ドラマや演劇のように視覚を媒介としない。一方、サッカーは、目の前に広がる試合の場面なしでは存在できない。飛び回るボールの軌跡と選手たちの激しい動きが醸し出すシーンを両目で見なくては、サッカーについて語れない。音楽とサッカーの外的形式は違う。

それでも、クロップ監督が音楽とサッカーの共通点を挙げたのは、その形式ではなく、交感方式についてである。彼が「音楽とサッカーは感情である」と語ったのは、人々は音楽とサッカーに接するとき、論理や分析より感情や情熱を持って接することが多いことを意味する。音楽のように、サッカーも人々の感情に影響を与えることができるという彼の思いが込められている。さらに彼は、サッカーは人々の感情を一つに集めることができるだけでなく、楽しい思い出と活力を提供できると説明した。サッカーを通じた幸せの伝播が可能だという。グラウンドの戦術ではなく、社会的、文化的観点からのサッカーの機能についての彼の考えを垣間見ることができた。

グラウンドでのクロップ監督を象徴する言葉は、全方位圧迫を意味する「ゲゲンプレス」だ。最前線から強く相手を封じ込むこの戦術は、激しい体力消耗と闘志を必要とする。ファンは、激しいクロップ監督のサッカーを強烈な音楽になぞらえて、「ヘビーメタルサッカー」と呼ぶこともあった。今季優勝を率いる中で、リバプールで最も目立った点の一つは、右サイドのフルバック トレント・アレクサンダー・アーノルド(22・英国)と左サイドのフルバック・アンドリュー・ロバートソン(26・英国)を活用した逆襲だ。アレクサンダー・アーノルドは2日現在、アシストが12(2位)、ロバートソンはアシストが8(4位)を記録している。今季リバプールの守備手を活用した逆襲と虚を突く戦術がどれだけ功を奏したかを示す。がむしゃらな圧迫だけを追求しない。

グラウンドで強力かつ緻密な戦術運用能力を見せた彼は、グラウンドの外で自分のチーム優勝が持つ社会的波及力についてもよく知っていた。興奮したファンに、「家で出ずにお祝いしよう」と呼びかけたのだ。新型コロナウイルス感染症を懸念したからだ。それでも、数多くのファンたちが、リバプールの本拠地であるアンフィールド周辺に集まって旗を振って花火を振った。

ファンの自制を求めた彼だったが、結局優勝のお祝いを通じた幸せの噴出が必要であることはよく知っている。彼は状況が許せば、ファンと一緒に必ず優勝パレードを行いたいという意見を強く示した。

リバプールは、音楽で有名な都市だが、サッカーで幸せな思い出をもう一つ作った。彼の言葉通りなら、音楽とサッカーは形式は異なるかもしれないが、私たちは皆、音楽とサッカーを通じて幸せを感じることができる。音楽とサッカーの両方を愛することは矛盾ではない。


李元洪 bluesky@donga.com