
失明したマウスの視力を回復させることが実証された。これに先立ち、網膜が壊れて明るさを認識できない魚に光を認知する能力を蘇らせることにも成功した。動物の視力を回復させる研究が成功し、失明治療の新たな道が開かれることが期待される。
米ノーステキサス大学医学部のサイ・チャバラ教授チームは16日(現地時間)、国際学術誌ネイチャーに、網膜で光を受け取る感覚細胞である光受容体(桿状細胞)と類似の細胞を作り、失明したマウスの視力を回復させることに成功したと発表した。
光受容体は網膜に存在し、弱い光を感知する感覚細胞だ。光を感知して電気信号に変え、神経を通じて脳に伝達する役割をする。このため光受容体が破壊されると視力を失う。ソウルボラメ病院眼科のシン・ジュヨン教授は、「光受容体は、黄斑変成や緑内障など後天的な疾患と遺伝的な要因、外傷、老化で壊れる」とし、「一度破壊されれば、自然再生は不可能で、格別の注意が必要だ」と話す。
科学者たちはこれまで、光受容体を再生する人工的な方法を模索した。米マウントサイナイ医科大学のチェン・ボー教授チームは2018年、魚の網膜再生を誘導する「ミュラーグリア細胞」を活用し、マウスの光受容体を再生することに成功した。しかし、再生した光受容体は脳で神経刺激を送ることができない問題が発見された。光は感知するが、形を識別することができなかった。暗闇では反応できないことも明らかになった。
科学者たちは、このため光受容体に代わる新しい「人工眼」に関心を向けている。実際、米ベイラー大学研究陣は昨年7月、光受容体の代わりに脳に直接神経刺激を与える技術を開発した。脳にチップを入れ、それにカメラをつないで映像のように見えるようにする。ただし、このような方法でも完璧な視力は回復されない。目前の物体をぼんやり識別する程度だ。
チャバラ教授チームも、光受容体を再生せず、繊維芽細胞を利用して暗い環境でも反応する光受容体と類似の細胞を作った。繊維芽細胞は身体の様々な組織を連結する細胞で、ケガをした組織をつなぐ役割をする。研究チームは、発作障害を治療する薬品であるバルプロ酸をはじめ、5種類の化学物質を発掘した。これらの物質を混ぜれば、繊維芽細胞が光受容体の類似細胞に変わる。研究チームは、視覚障害があるマウス14匹に光受容体類似細胞を移植し、3~4週間観察した結果、6匹のマウスは、弱い光に対する瞳孔反応が改善された。暗所を好むマウスを利用して視力が回復したのか追加実験も行った。瞳孔反応があった6匹は、明るい場所よりも暗い空間でより多くの時間を過ごしたことが分かった。チャバラ教授は、「光受容体を回復させて視力を取り戻す効果的な治療剤はない」とし、「今回の研究結果が、視力を回復させる潜在的な治療法になるだろう」と強調した。
コ・ジェウォン東亜サイエンス記者 jawon1212@donga.com