Go to contents

アレクサンドロスの羽

Posted December. 17, 2019 08:34,   

Updated December. 17, 2019 08:34

한국어

ダリウス3世を大破させ、インドに向かったアレクサンドロス大王は、ペルシア最後の領土、現在のアフガニスタンに位置したバクトリア地方に侵入する。ここで、彼は見たことのないとてつもなく険しい山岳の要塞に出くわす。アフガニスタンは今も乱行不落の険しい地形で有名だ。バクトリアの太守オキシアルテスは険しい岩山の頂きに要塞を築いていた。高山地帯は食料が腐敗する心配もない。彼は3万人が2年間食べられる食糧を備蓄していた。天下のアレクサンドロスもこの山を見上げ、ここを攻めるには羽の生えた兵士が必要だと舌を巻いた。普通の人ならこれは諦めを意味するが、アレクサンドロスは違った。彼は羽の生えた兵士を見つけた。否、創り出した。

彼がつけた羽とは莫大な成功報酬だった。大王は要塞の裏側、断崖絶壁をよじ登れる志願者を募集した。最も早い兵士には1~3等まで10タラントの報償を約束した。当時、エジプト傭兵の年収は10分の1タラントだったので10年分の収入に当たる。300人の志願者が岩にパイプをはめ込みロープをかける原始的な方法でロック・クライミングに挑戦した。30人が墜落死したけれど、残りの兵士は登りきった。絶壁から姿を現したギリシヤ兵を見て、バクトリア軍は腰を抜かし戦闘を諦め降参した。

エルビン・ロンメルは歩兵学校の教官当時、融通性があって直観的な力を発揮して行動するなら、つまり大胆かつ創意工夫を凝らして行動するなら、どんな戦力の劣勢や不利な地形でも乗り越えられると信じた。しかし、いくら指揮官が優れていても従ってくれる兵士がいなければ無駄だ。クリエイティブな行動はそれだけリスクを伴う。そのリスクを乗り越える方法は、アレクサンドロスの羽、すなわち報償が必要だ。官僚社会は不思議というほど責任追及に厳しく報償は弱い。だから保身に走り、事なかれ主義がはびこる。これでは絶壁はおろか小川すら渡れない。失敗には励ましを、成功には報償を与えるのが先進国の条件ではなかろうか。