「痛い…痛い…」。体重140キロ台の息子はしきりに大声で喚きたてた。彼は子どもの頃、脳膜炎の後遺症で知的障害を持つ。狭いアパートで重い息子の面倒を見るのは80歳の老母だ。息子は一日中ベッドで動けず、「お母さん」だけを呼び立てる。年老いた母はバス代を節約するため、毎日往復1時間の距離を歩いて息子が大好物の海苔巻きを買ってきて食べさせる。
◆あるテレビ番組で接した母子の話は衝撃的だった。制作陣が取り持って息子を診察した医者は、「食べ過ぎて太ったのではなく、子どもの頃からの間違えた食習慣が高度肥満につながったようだ」と話した。生計のために働くしかなかった母親は、子どもの食事をきちんと与えられず、お菓子のようなカロリーの高いおやつを食べさせたのが肥満につながったと嘆いた。
◆肥満率と所得が反比例するという保健福祉部の統計が一昨日発表された。所得の高い人がもっと運動をし、その分正常体重を維持する比率が高いというのだ。このような現象は女性にもっとはっきりして現れる。米国でも金持ちの村と貧しい地域の住民の肥満の比率は大きな格差を見せる。金持ちが体重が重い時代は過ぎ去った。健康に気を使いながら、カロリーの低い食べ物をきちんと食べるには金と時間が要る。
◆「肥満の神話」の著者のポール・カンポスはスリムな身体をエリートの節制を表す社会的象徴に位置づける。肥満によって日常と仕事先で行われる差別によって、スリムな人がさらに得をする社会になった。ただでさえ韓国社会は外貌至上主義に陥っている。肥満が社会的階層の烙印を押す指標になるのではないか心配だ。昨年発刊されたソウル研究院の報告書は、親の所得と学歴が低い家庭の青少年肥満率が高い理由を、高熱量・低カロリーの食品を買って食べる回数が相対的に多いためと分析した。肥満、何より児童と青少年の肥満は単に外貌の問題ではなく、「健康不平等」を象徴する社会的課題に接近しなければならない。
高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com






