毎週、数百冊の本をチェックしていると、ドキッとする本に出会う時がある。『鉛筆削りの定石』という本がそれだ。初めて本のタイトルを見て、「鉛筆を削るのにそんなにすごい技術が必要なのか」と本を開き、そのささいな技術に命をかける作家の姿に笑いが出た。特に、人々が鉛筆を削る時によくするミスだと言って、正しい姿勢で体をほぐす運動の模範を示す写真を見て、大笑いしてしまった。
信じられないが、米ニューヨーク州のビーコンに住む著者は、鉛筆削りを生業としている。鉛筆1本を削るのに35ドル(約3万8000ウォン)。彼が削る鉛筆を愛用する有名人の中には米国の映画監督スパイク・ジョーンズもいる。彼の証言を聞いてみよう。
「生涯でこのように妖艶で滔々とした鉛筆は初めて見ます。鉛筆が私を軽蔑する目で見て、教養のない無知な奴だとあざ笑うようで、死にたくなりました。それで思わず鉛筆で首を刺してしまいました」
本は終始、このような「真剣な姿勢」で笑いを誘う。黒鉛の芯と木、そして消しゴムで構成された鉛筆の解剖図まであり、鉛筆の誕生と発展の過程を語り、消しゴムについては、「ミステリー」という。まるで、真剣な表情で観客を抱腹絶倒させるスタンディングコメディを見るようだ。
圧巻なのは最後の章だ。小型ナイフを筆頭に各種器具で鉛筆を削る技術(驚くことに「鉛筆削りカッター」はなく「電動鉛筆削り」は憎悪と破壊の対象だ)を伝授した彼の最後の選択は何か。少し想像してみよう。ビンゴ! 鉛筆に指を触れずに心での鉛筆削りだ。
『鉛筆削りの定石』が微視的なテーマで遠心力のある笑いを与えるなら、『旅行精神』は全世界を舞台にした旅行という巨視的なテーマで求心力のある笑いを贈る。「賢明な旅行者のための変わった案内書」という副題がついたこの本には、旅行書と言えば思い浮かぶ華やかな風景写真は一つもない。その代わり、アルファベットA〜Zの順に旅行すれば浮ぶ単語、人物、場所に対するウィット溢れる諷刺的な文章で旅行の本質を捉える。
「観光客は見ることを心から恐れる。カメラが彼らの代わりに見る。彼らは写真を撮って心が安らかになり、旅行の衝撃を和らげることができる」
「(ガイドブックは)以前は聖書のように崇められたが、今は提供する情報のレベルやインターネットでアクセスできる無料の情報に比べると非常に高価なので時代遅れになってしまい、事実かどうかを確認する道具にすぎない」
フランスの旅行専門家で作家の2人の筆者が2012年に発表したこの本には、世界各地の旅行地についての情報や経験談も含まれている。ギリシャのイオス島のヌードビーチにガードマンと現れ、「きまりが悪いので水着を着て下さい」と勧める貴婦人の正体がバーバラ・ブッシュ女史だったとか、パリを訪れた日本人観光客の25%が深刻なうつ症状で病院のやっかいになるという内容もおもしろい。「善と美に向かって進め」という意味を含んだギリシャ語のあいさつ「ストカロ」だけは必ず記憶しておくように。






