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宗廟前の世運4区域をめぐる論争過熱 事実を踏まえた議論を

宗廟前の世運4区域をめぐる論争過熱 事実を踏まえた議論を

Posted December. 17, 2025 09:03,   

Updated December. 17, 2025 09:03


ソウルの宗廟(チョンミョ)前に位置する世運(セウン)4区域の高層再開発を巡り、政府とソウル市の対立が、次第にチキンゲームの様相を帯びてきた。宗廟の景観を侵害するとの論争が政争化するなど、議論が過熱する兆しがはっきりする中、事実ではない内容に基づく主張も出てきている。。

11日、ソウル市は、国家遺産庁が推進中の「世界遺産法施行令」の改正案について、「高さや景観など、すでに綿密に運用されている都市管理システムに、『世界遺産半径500メートル以内の世界遺産影響評価の義務化』を一律に追加するのは、行政の便宜を優先した二重規制だ」と強く反発した。6つの自治区、38の整備区域の都市開発事業に支障を来す「江北(カンブク)殺しの法」だという主張だった。

これに対し、翌日、国家遺産庁は反論に出た。改正案の内容は、世界遺産影響評価の対象事業や事前検討手続き、評価書作成などに関するものであり、「500メートル以内で世界遺産影響評価を義務付ける」という規定自体は存在しない、という説明だった。遺産庁は、「ソウル市が『法的手続きの不備』などを理由に応じてこなかった世界遺産影響評価制度に、法的根拠を与える趣旨だ」と説明している。

15日に公式サイトで公開された立法予告の内容を見ても、問題視された規定は確かに存在しない。海外の類似立法例を紹介する中で、「フランスでは、歴史記念物の周囲500メートル以内で建築許可を出す場合、国家が公認した建築遺産・景観専門家(ABF)の承認を必ず受けなければならない」と紹介しているにすぎない。

ソウル市の誤解は、10日の 許民(ホ・ミン)国家遺産庁長官のブリーフィングで、「文化遺産法に基づき、関連告示を検討する」との説明が、拡大解釈されたことに端を発したとみられる。遺産庁の関係者は、この告示について「国家指定文化遺産であり、かつ世界遺産である対象に限り、またその価値に影響を及ぼす恐れのある『大規模』行為に限定して、500メートル以内では遺産庁長官の許可を受ける方向で検討している」と説明した。ただし、実際にこの告示が整備されれば、宗廟や昌徳宮(チャンドクグン)、朝鮮王陵、水原華城(スウォン・ファソン)などの周辺が影響を受けることになる。

事実無根の主張も論争に加わっている。一部では、世運4区域に建設される高層ビルを、フランス・パリのエッフェル塔になぞらえる声まで出ている。「エッフェル塔も建設当初は非難されたが、今ではパリの象徴だ」という理屈だ。だが周知の通り、パリは強力な都心建築物の高さ規制を通じて、6階程度の歴史的建築が連なる景観を守り抜き、世界中から愛される都市となっている。1973年に完成した高さ209メートルのモンパルナスタワーはいまも市民に忌避されている。

「誰の声が大きいか」を競うのをやめ、問題の原点に立ち返るべきだ。ソウル市は、世運4区域の高層開発が、世運商街を撤去し、緑地を造成するための財源確保だと説明している。「宗廟と南山(ナムサン)を結ぶ緑地軸」を整備する世運地区再開発には、約1兆5000億ウォンが必要だという。分断された緑地をつなぐことに異論は少ないだろう。しかし、そのためにそれだけの資金を投入すべきかは、別の問題だ。開発利益とはいえ、高層開発は都市の過密化を一段と進め、市民に負担を強いる側面があるのも事実である。宗廟の景観を大小なりとも損ない、限られた都市の「空中開発」という切り札まで使って、1兆5000億ウォンを捻出することに、市民は果たしてどれほど同意しているのだろうか。