Go to contents

看板も広報もない「不親切なマーケティング」が人気

看板も広報もない「不親切なマーケティング」が人気

Posted June. 17, 2013 04:41,   

1月にオープンしたここは、看板や案内文句などない。店の名前を「ボルト82」と紹介したマ・ソウ社長(32)は、「秘密なスペースでウイスキーを飲むのが、うちの店のポイントだ」とし、「看板をつけたり、店を知らせる広報活動など一切行っていない」と話した。

●存在を現さない会社

消費者の目を引くため、数々のマーケティング手法を打ち出し、ブランドの露出を最大限行うのが、流通業界や外食業界の一般的広報戦略だ。しかし最近、一部では看板の無い店、ブランドの名を消した商品など、露出を最小限に抑える動きが現れている。マーケティングや情報の洪水の中で、かえって存在感を浮き彫りにしないほうがよい、という逆発想から始まっている。

漢南洞(ハンナムドン)の別のバー「スピークイージーモルタル」は、看板がないのはもとより、出入り口を探すことすら難しい。ドアを叩けば、従業員が出てきて、「どうなさいましたか?」と尋ね、一種の「見え透いた劇」を演じる。それだけ、秘密なスペースであることを強調している。出入り口の外は静かだが、中には、40人あまりの人たちでにぎわっている。ここは、オープン当初は看板があったが、6ヵ月後に外した。スピークイージーモルタルの関係者は、「通りが過ぎる客が増えると、居心地の悪さを訴える客らが出てきた」とし、「看板を外し、知る人ぞ知る店にした」と放した。

看板のないこれらの店は、龍山区(ヨンサング)漢南洞や梨泰院(イテウォン)、弘益(ホンイク)大学前、江南区清潭洞(カンナムグ・チョンダムドン)など、主に若者たちが好んで訪れる地域を中心に生まれている。梨泰院の日本定食屋「メシヤ」も、看板がない。椅子が10個しかない小さな店だが、立ち並ばなければならないほど人気が高い。メシヤのキム・ゴンヒ社長は、「一食を食べても、おいしい店を訪れる時代となっている」とし、「看板がなかったり、PR手段がなくても、コンテンツがよければ、人たちは訪れてくる」と話した。

●ブランドを露出しない企業

存在を表さないことも、営業戦略だ。自分を隠してこそ存在感をあらわすいわば、「鬼ごっこマーケティング」という評価だ。東国(トングク)大学のヨ・ジュンサン教授(経営学)は、「詳しい説明がなく、不親切に見えるが、オンラインを通じて自然に口コミで広めさせる口コミマーケティング、好奇心を刺激するティーザーマーケティング、選ばれた人のみ対象とするVIPマーケティングなど、さまざまな戦略が盛り込まれている」と主張した。

流通大手各社も、このような戦略を積極的に導入している。SPCが07年、梨泰院にオープンしたデザートカフェ「ファッション5」は、6年間看板がない。数少ない客だけを相手に、サービスの質を高め、高級なイメージを保とうとする戦略だ。

現代(ヒョンデ)デパートは最近、男性雑貨の編集売場「ロイヤルマイル」をオープンし、ブランド製品のロゴやブランドの名前をほとんど出さなかった。ここには、ベルトや携帯電話のケース、文房具など、30ブランドの製品が展示されている。現代デパート・商品本部のイ・ソンフォン・バイヤーは、「消費者らが、製品にのみ集中するため、売上げにも前向きな影響を与えている」と語った。

海外では、米ニューヨークのソーホー地域の小さな衣類店や日本東京の有名ラーメン店の中には、看板が無くても、長い間名所といわれているところが多い。

LG経済研究院のチョン・ジヘ責任研究員は、「マーケティングを巡る競争が過熱し、企業のメッセージを人たちが信頼していないことを示しているとも受け取れかねない」とし、「こんな時こそ、コンテンツやサービスの質を高めなければならない」と話した。