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名ばかりの中間層、一歩間違えれば下層民に

名ばかりの中間層、一歩間違えれば下層民に

Posted January. 15, 2013 03:18,   

2年前飲食店をオープンしたA氏。一所懸命チラシを配布しながら宣伝したおかげで、最初は期待どおりの売上があった。しかし、3ヵ月を過ぎてから急速に客足が遠ざかり、すぐ店は閑古鳥が鳴くようになった。2年で退職金を全て失ったA氏は先月末、廃業して建物の警備員に再就職した。同氏は、「数十年を一生懸命働いて購入したマンションまで処分する時は涙が出た。金を貯めるのには数十年がかかったのに、破産するのは一瞬だった」と訴えた。

韓国の中間層の問題は、このように一歩間違えると、一瞬にして下位階層に墜落する高リスク群が多いということだ。1997年の通貨危機以降早期退職が日常化したが、それに相応する個人の老後対策や国レベルの社会福祉安全網が十分でないためだ。特に会社など、所属する組織の頂点に立つベビーブーム世代の中間層の相当数は、表向きでは華麗でも、実は未来への不安と借金に悩まされている「名ばかりの中間層」だ。

●見かけは華やかだが…

「最も苛立つのは江南(カンナム)で住み、会社所有の車に乗っているという理由で、周囲の人が私はかなり成功していると思うことです。実はまったくそうではないのに…。だからと言って、本当のことを喋るわけにもいかないし…」

中堅企業の役員のイ某さん(54)の月の所得は600万ウォン。統計庁の中間層基準によると、11年、韓国の中位所得(全体国民を所得順に一列に並べた時、ちょうど中間にいる人の所得)の150%(525万ウォン)をずっと上回って「高所得層」に分類される。

同氏は6年前、これまで貯めた全財産と銀行からの5億ウォンの融資でソウル江南に8億ウォンの新築マンションを購入した。マンション価格が上昇して幸せだった期間は1年程度に過ぎなかった。08年以後、下り坂をたどっている住宅価格は今、買った時より1億ウォン以上安くなった。

毎月利子だけで280万ウォンを払っている上、大学生の子どもの授業料などで家計が厳しくなった彼は、2年前マンションを急売に出したが、今まで売れようとする気配が見えない。同氏は、「今年、役員再契約までうまくいかなかったら、何ら対策がない。早くマンションを売って、ソウルの郊外に伝貰(チョンセ=比較的高額の保証金を支払う代わりに月払いの家賃が免除される韓国独自の賃貸方式)を借りて経済状況に見合う暮らしがしたい」と話した。

統計庁の家計収支基準によると、韓国の「3世帯中2世帯」(68%)は中間層で、低所得層は12%に過ぎない。しかし、統計上の中間層に分類された人の中で、実際は下流層と変わらない人が少なくなく、イさんのように所得が多くても、家計負債に悩まされる「限界中間層」も相当数存在する。無理して住宅を購入した「ハウスプア」(家を持つ貧困層)は、莫大な家計負債に悩まされ、家を持たない中間層の相当数は急騰する伝貰・月貰(ウォルセ=月払いの賃貸)や子どもの教育費負担などで「伝貰難民」に転落しているためだ。このため、韓国の中間層崩壊現象は表面的な数字で示されることよりずっと深刻な状況だと、専門家は分析している。

大型建設会社に勤めて20年になる年俸7000万ウォンのキム某さん(48、ソウル遁村洞)は、「子どもたちがもうすぐ中学生になるので、教育のためにも江南で伝貰を求めなければならない」とし、「引っ越すと、表向きでは江南の中間層のように見えるかも知れないが、借金をして伝貰金を得なければならないし、高い塾へ通わせなければならないし、生活が色々な面で厳しくなりそうで心配だ」と話した。

●恐怖、剥奪感など精神的な傷も残す

中間層の崩壊は、内需・分配構造などの指標を悪化させるだけでなく、経済活動に対する国民の自信を落とし、未来への不安心理を膨らませて深刻な傷跡を残す。

特に、ここ10〜20年間、各種経済危機を身を持って経験したベビーブーム世代は、「もしいま会社で首になったら、どうなるだろうか」「今の『暮らしの質』をいつまで享受できるだろうか」と心配する「不安症候群」に悩まされている。戦々恐々する既成中間層の姿は青年世代にも未来への否定的な認識を持たせる。

梨花(イファ)女子大学のハム・インヒ社会学科教授は、「『私は中間層に属する』という帰属意識は通貨危機の時、一度大きく墜落し、00年代半ばに高くなったようだったが、世界同時不況以後、再び急激に下落した」とし、「身分上昇への期待感が高い高速成長時代と違って、低成長時代には『階層構造』が強固になり、人々が『階層移動が不可能』と考えて挫折するようになる」と説明した。

俸給生活者が殆どの中間層の間では、「国の経済はうまくいっているし、税金もきちんと納めているのに、肝心の自分の賃金や生活水準は前を変わらない」という不満が根強い。経済成長の落水効果が自分に届かないということだ。小学校教師のキム某氏(32、女性)は、「大企業は史上最大の利益を出したと言っているし、国の格付けも上昇しているというのに、私は伝貰金を得るのも大変だ」とこぼした。

「深まる中間層のため息」が競争と比較に慣れている社会ムードから端を発しているという指摘もある。ソウル大学の郭錦珠(クァク・クムジュ)心理学科教授は、「消費を誇示する時代、テレビドラマが上流社会だけを見せる今時の人々の間では、いつも他人の暮らしが自分より優越しているようだと思うようになる」とし、「外国のように主観的な幸福感や暮らしの精神的価値を新しい中間層の基準に据える時期が来た」と指摘した。



jarrett@donga.com