北朝鮮が労働党代表者会を控えて、金正覚(キム・ジョンガク)次帥を人民武力部長に抜擢したのは、金正式(キム・ジョンウン)氏流の「けん制とバランス」の人事スタイルと解釈されている。側近だが、誰にも全権を与えない独裁国家特有の用心術でもある。金正恩氏としては、軍部の崔側近である李英浩(イ・ヨンホ)人民軍総参謀長を頼りにしながらも、権力が過度に集中しないよう管理しなければならないからだ。
北朝鮮で総参謀長は、実際に部隊を動かして軍事作戦を指揮する軍令権を行使する。それに対して、人民武力部長には作戦権限がない。補給などの後方支援や行政を担当する軍政権が与えられているだけだ。権力は銃口から出るだけに、総参謀長の権限の方が強い。
今後、金正覚は単なる人民武力部長に止まらないと見られている。20007年から軍総政治局の第1副局長を務め、病気に煩っていた故趙明祿(チョ・ミョンロク)次帥に代わって、事実上総政治局長の役割を果たしてきた。
総政治局は、軍幹部たちの政党活動に対する監視や人事などを通じて、金正恩氏の指導体系を樹立する権力の中枢組織だ。総政治局は、金正恩氏が後継者に公式化された2010年9月、党代表者会で党規約の改正を通じて、党中央委員会の部署と同じ権能が与えられるなど権限が大幅に強化された。
さらに、金正覚は昨年12月、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の葬儀車を護衛した「7人」の一人で、今年2月に金正恩氏が断行した初の人事で、李英浩と同じ階級である次帥に昇格した。強力な政治力を背景にした人民武力部長が誕生したのだ。
統一研究院の全賢俊(チョン・ヒョンジュン)主任研究委員は、「何でもないポストも、力を持った人が就けばパワーのあるポストになる」と言い、「金正覚と李英浩を、それぞれ中核ポストに抜擢し、『けん制とバランス』を図りながら、必要なときは力を合わせるという多元的な布石と見られる」と分析した。
これに加えて、人民軍次帥に昇格した崔龍海(チェ・リョンヘ)党書記と玄哲海(ヒョン・チョルヘ)国防委員会局長まで中核のポストに抜擢すれば、権力は3分割され、さらに多元化することになる。世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)首席研究委員は、「軍総参謀長と人民武力部長、軍総政治局長は、金正恩氏の軍指導体系の3大軸だ」と話した。
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