公安当局は、北朝鮮労働党の指令を受けてスパイ活動を行ってきた「従北」地下党組織「旺載山(ワンジェサン)」を摘発し、捜査している。「旺載山」を組織し、活動を主導した容疑で民主党出身の元国会議長秘書官らが拘束され、波紋が広がっている。民主労働党(民労党)など野党所属の地方自治団体首長や基礎議会議員、前・現職党役員、労組幹部ら約40人も捜査線上に上がっている。当局は、「旺載山」が韓国内政党や労働団体の動向、軍事機密などを収集して北朝鮮に報告していたと把握している。彼らが、政界、経済界、学界などに広範囲なネットワークを構築しようとしていたことが明らかになっている。
民労党は今回の事件の捜査と関連して、論評で「李明博(イ・ミョンバク)政権が、進歩陣営に公安弾圧をしている」、「来年の総選挙、大統領選挙を控え、民労党のあら捜しをし、審判をまぬがれようという最後のもがきだ」と主張した。しかし、民労党関係者がスパイ事件にかかわったことは今回が初めてではない。03年8月、民労党のカン・テムン顧問(当時)が、北朝鮮側要人に情報を渡して実刑を宣告され、06年10月には民労党中央委員と事務副総長らが関与した「一心会」スパイ集団事件が発生し、有罪判決を受けた。09年7月には、民労党非正規職担当局長が北朝鮮体制を称賛した文をインターネットに掲載して拘束された。現時点で民労党はひとまず捜査状況を見守り、責任を取る姿勢を示すことが望ましい。民労党が「野党蹂躪」を主張して政治攻勢をしかけることは、捜査を妨害し、容疑者を保護する行為に該当する。
01年に創党した民労党は、国会議員、地方自治体首長、基礎議会議員を多数輩出し、議会政党になった。しかし、民労党の党役員が相次いでスパイ事件に関与したことは、民労党が果たして大韓民国憲法の精神に合った政党組織なのか疑問を生んでいる。進歩新党が民主党から分離して新しい政党を作ったのも、民労党の従北主義のためだった。従北は、金日成(キム・イルソン)王朝追従も同然だ。
民労党は、進歩新党、国民参加党と進歩政党の統合を推進している。民主党も進歩の旗の下、民労党との連帯を模索している。しかし、体制の基盤を揺るがす似非進歩を取り除くことができなければ、いかなる名分の統合・連帯も、国民の支持を受けることはできない。孫鶴圭(ソン・ハクキュ)代表の「従北進歩」警告発言で内紛に包まれた民主党も、今回の事件を痛切に受け入れなければならない。
民主化勢力は、大韓民国体制としての民主主義を確立するために努力する人々をいう。民主国家としての土台を堅固にしようとする彼らの努力を足元から侵食し、大韓民国を転覆しようとするスパイ・従北勢力を民主化勢力とひとまとめにして正当化することは、決して容認できない。真の進歩、真の民主化勢力が正当な評価を受けるには、彼らと明確に線を引かなければならない。
北朝鮮が、韓国の反政府勢力と手を握り、体制転覆を企図する統一戦線戦略は、70年代以降、岐路を迎えた。国家保安法、保安機関、安保意識など、韓国の法律根拠と社会環境が妨害要因として作用したためだ。すると北朝鮮は、「下層統一戦線」戦略に「上層統一戦線」戦略を追加した。これまで提携の対象ではないと考えていた韓国政府と政府関連機関などの「上層部要人」に手を伸ばしたのだ。左翼運動の理論家として活動した安秉直(アン・ビョンジク)ソウル大学名誉教授は、朴正熙(パク・チョンヒ)政権当時、捜査機関が発表した左翼事件の報道内容の大半が「基本的に事実だ」と証言した。人民革命党は、共産革命に向けて韓国で自発的に生まれた組織であり、統一革命党は北朝鮮の指令によって結成された革命組織であったという告白だ。北朝鮮民主化フォーラムの李東馥(イ・ドンボク)常任代表は、「金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代は、政府自らが広い意味で地下党の役割をした面があり、北朝鮮の地下党工作も少なかった。李明博(イ・ミョンバク)政府になって状況が変わると、北朝鮮が再び地下党工作に熱を上げている」と分析した。
73年5月、西ドイツ当局は、ハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー内務長官にヴィリー・ブラント首相の秘書ギュンター・ギヨームが東ドイツ国家保安省(シュタージ)の要員だと報告した。ギヨームが逮捕されたのは1年後で、ブラント首相は辞任した。シュタージは、統一前まで西ドイツに約3万人のスパイを暗躍させ、議員や閣僚、情報機関員だけでなく、未来の人材となる議員補佐官や大学生まで引き入れていた。
金日成主席も73年4月、スパイに、「南朝鮮では高等考試さえ合格すれば、行政府、司法府にいくらでも潜入することができる。頭が良い子どもはデモに送り出さず、国家試験の準備をさせろ」という指令を下した。その結果が国内の各界で現れている可能性がある。統一すれば北朝鮮と内通した勢力の実体が明らかになるが、その時まで待つことはできない。政府は、内通勢力の実体を明らかにすることに全力を傾けなければならない。彼らが政界や政府機関だけでなく、国内の主要団体で活動することも、徹底して遮断する必要がある。






