李明博(イ・ミョンバク)大統領は29日、延坪(ヨンピョン)島砲撃に関する国民向け談話で、「国民の生命と財産を守ることができなかった責任を痛感する」と述べた。国家保衛の責務を果たせなかったことに対し、大統領が謝罪表明する姿を目にした国民の心は、複雑だった。李大統領は、「今後、北朝鮮の挑発には、必ず相応の対価を払わせる」と強調したが、今、国民が願うのは、言葉ではなく実践であり、行動だろう。
李大統領は、天安(チョンアン)艦沈没の2ヵ月後に行われた「5・24特別談話」でも、同様の約束をしたが、守ることができなかった。天安艦襲撃から8ヵ月間、改革スローガンは溢れたが、延坪島事態では穴だらけだった。改革スローガンに国民が疲労感を感じるほどだ。
政府と軍を信じ、国民が足を伸ばして眠れるよう、安保問題を国政の最優先課題としなければならない。具体的な工程表を早期に国民に示し、適切かつ内容のある改革で、国防の実質を変えることを望む。「最高の性能を備えた最新兵器で、西海(ソヘ・黄海)の5島を武装する」という華やかな言葉ではなく、具体的なタイムテーブルを示し、国民からのチェックを受けなければならない。
延坪島襲撃で、軍が即時に報復できなかったのは、兵器システムや装備に根本的な原因があるとはみられない。北朝鮮を凌駕する戦闘機と高性能ミサイルも、報復手段になる。兵器と装備が問題なら、国民の国防費の負担を増やすことで、解決できる。問題は、より根源的なところにある。国軍統帥権者である大統領と軍作戦の最高責任者である合同参謀議長、軍首脳部との信頼が、十分でないようだ。軍関係者らは現在、大統領と軍が離れていると訴える。
大統領と軍の報復意志や精神力が弱いという点も見逃せない。普段から、大統領と合同参謀議長が、有事の際に備えた対北戦略と作戦概念を共有しているのかすら疑問だ。挑発の度に、対応のレベルを巡って、慌てている姿がそれを裏づける。軍は、作戦領域では、指揮官の責任下にあるため、独自の役割を果たせず、大統領は、行き過ぎた介入で作戦に混乱を与え、報復の時を逃すというパターンを繰り返している。
国民は、大統領の言葉をもう一度信じたいが、今、国民の心は遠ざかっている。まず、5・24談話で何を実行し、何が進行中で、何が守られないのか、点検表から作らなければならない。今は言葉ではなく、悲壮な決断によってのみ、大統領と軍、そして、国民の信頼を回復することができる。