韓国政府がグローバル為替戦争の仲裁に乗り出したのは、これ以上、主要20ヵ国(G20)首脳会議で、為替問題を避けて通ることはできないと判断したためだ。ソウルG20首脳会議が、いきなり浮上した為替レートという変数により、戦場と化すのをただ見ているのではなく、積極的に仲裁に乗り出し、最小限の共通項を引き出す必要があると考えたのだ。
数週間前まで、韓国政府は、「為替問題は、G20首脳会議の公式テーブルに上げないほうがよい」という消極的な態度を示していた。
まず、政府は、20ヵ国が事前に報告したマクロ経済政策で、為替と関連した共通項を最大限引き出している。また、共通項と相違した主張をしている国とは、個別接触を行っている。
●為替仲裁案、バランスの取れた成長の枠内で
ソウルG20首脳会議での議題のうち、△持続可能な成長に向けた各国の政策代案、△国際通貨基金(IMF)クォーター改革、△開発懸案については、すでにワーキンググループを作っている。各国の実務者級がワーキンググループに属し、懸案について集中的に研究している。
G20準備委はまず、政策代案をまとめる段階で、為替仲裁案の骨格を作る計画だ。すでに各国は、持続可能なバランスの取れた成長に向け、自国の為替や物価、財政などの方向性についての報告書を提出している。今は、各国が他の国々の報告書を順番に回しながら、互いに確認する作業を行っている。
政府の関係者は、「1年間、ソウル首脳会議を準備してきたが、今になっていきなり、為替問題をめぐり、19ヵ国の意見を新たに聞くわけにはいかない」とし、「従来の首脳会議の手続きを活用し、為替に関する共通項を引き出し、意見の隔たりが大きい国とは、別途調整を行うつもりだ」と語った。
G20首脳会議は、20ヵ国の首脳が全員合意してこそ、その内容が声明に反映され、実効性を持つことになる。つまり、準備委は、為替について激しい意見対立を見せている国とは、事前に接触し、意見を調整しなければならない。このような作業の最初の成果は23日、慶州(キョンジュ)で発表される予定のG20財務相中央銀行総裁会議の声明で明らかになる予定だ。
●「新プラザ合意」は実現するか
米国は、ソウルG20首脳会議で出される為替仲裁案が、プラザ合意に匹敵することを期待している。
しかし、ソウル首脳会議で新プラザ合意を期待するのは、無理だというのが大方の見方だ。当時、円やマルクは国際的に通用されていたが、現在、中国人民元は使用先が主に、中国に限られている。そのため、中国以外の国が人民元を買い付け、強制的に人民元の切り上げを行う手立てがない。さらに、1985年の当時は、日本とドイツは米国の勢いに押され、米国のドル安を受け入れたが、今は中国が人民元切り上げに極端に反対している。
三星(サムスン)経済研究所のチョン・ヨンシク首席研究員は、「ソウルG20首脳会議で、大規模な市場介入による為替調整(プラザ合意)よりは、より柔軟なレベルの国際協力が行われるだろう」とし、「03年ドバイで、主要7ヵ国(G7)が合意した為替合意のレベルに止まるだろう」と見込んだ。ドバイG7合意は、「為替の柔軟性が必要だ」という文言上の合意に止まった。しかし、為替を巡る国際協力が功を奏し、合意から2年後、円は3.5%、ユーロは9.2%が切り上げられた。
多国間の国際交渉経験の多い政府関係者は、「来年G20首脳会議の議長国はフランスだが、米国の立場からすると、IMFクォーター改革などにより、関係がギクシャクしている欧州諸国よりは、韓国で首脳会議が開かれる時に、為替問題に決着をつけようとするだろう」とし、「『このままではいけない』という国際的な共通認識があるので、かつてのG20首脳会議の時よりは、高いレベルの為替仲裁案が出ることもありうる」と話した。
中央(チュンアン)大学国際大学院の安忠榮(アン・チュンヨン)碩座教授は、「韓国が、どのような仲裁案を出すのかが問われている」とし、「貿易黒字を多く出している国々が、自国通貨の切り上げ幅を増やしていくレベルで、国際的な調整を引き出すことができるだろう」とアドバイスした。
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