試合序盤に2ゴールを奪われ、押され気味だったイングランドは1−2に追いつき、勢いに乗っていた。ランパードのゴールが認められたら、試合の結果は違ってきたかも知れない。イングランドのマスコミは、主審の誤審を厳しく批判した。ヒュー・ローバトソン英体育相まで前面に出て、「国際サッカー連盟(FIFA)がゴール判定に技術を導入しなければならない」と主張した。
誤審疑惑は、アルゼンチンとメキシコの16強戦でも取りざたされた。アルゼンチンのカルロス・テベスの明らかなオフサイドを審判が見ず、ゴールと認めた。グループリーグでも決定的な誤審が後を絶たなかった。C組米国—スロベニア戦。2−2の同点だった後半、米国のモーリス・エドゥが追加ゴールを決めたが、マリー出身の主審は訳の分からない反則を宣言し、ゴールとして認めなかった。
G組ブラジル—コートジボアール戦ではルイス・ファビアーノがシュートする際、2度もボールに手を出したが、審判はホイッスルを吹かなかった。B組韓国—アルゼンチン戦でも、ゴンサロ・イグアインの3番目の得点は明白なオフサイドだったが、主審が逃した。
このように誤審が続出したことを受け、FIFAが誤審防止のためのシステムを導入しなければならないという主張が強まっている。イングランドのファビオ・カベッロ監督とフース・ヒディンク元韓国代表チーム監督は、ゴールだけはビデオ判定を導入すべきと主張した。
しかし、ジェローム・ヴァルケFIFA事務総長は先日、「14年大会から副審2人をさらに投入することを検討している」とした上で、「ビデオ導入は全く議論されていない」と一線を画した。ゼップ・ブラッターFIFA会長は、「サッカーは人間の領域に残っていなければならない」とし、「判定の是非とは関係なく、ビデオを見るために試合が中断してはならない」と主張している。
FIFAが、誤審をめぐる議論をかえって楽しんでいるという主張もある。ブラッターも、「ファンは試合について論争することを楽しんでおり、それがサッカーの人間的な本性だ」と言う。しかし、深刻な誤審のため、W杯の権威まで揺れている状況で、FIFAもいつまでも手を拱いているわけにはいかないだろうという展望も多い。副審は近いうちに追加されるものとみられる。欧州サッカー連盟(UEFA)は、09〜10年欧州リーグにゴール判定のため、副審2人をさらに投入した。
「スマートボール」を導入しようという主張も出ている。スマートボールはサッカーボールの中にチップを組み入れ、電子装備と連結し、ボールの位置を正確に追跡し、オフサイドの可否まで判定する方法。FIFAもスマートボールの導入を検討したが、ボールを強く蹴ると、センサーが誤作動するなど、技術的にまだ完璧でないと判断した。
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