米国と中国の両首脳が、人民元の為替問題を巡り異見を示した理由は何だろうか。専門家らは、両国間の貿易不均衡の原因を巡る見方が完全に異なる上、人民元切り上げによる損得を巡る分析も同様に大きく異なっているためだと分析している。
①両国間の貿易不均衡の原因
米商務部によると、対中貿易赤字は05年から毎年2000億ドルを超えており、昨年は2268億ドルに達した。失業率は、08年の5.8%から昨年は10.9%へと高騰した。米国は低評価されている人民元を盾にした安価な中国製品が大きな要因だと主張している。一方、中国は、米国人らは貯蓄をしない代わりに、低価格の中国製品を消費し、ハイテク製品の輸出を嫌っているため、対中輸出は増えていないと主張している。
②人民元切り上げを巡る損得分析の違い
中国は昨年、国内総生産(GDP)の伸び率が8.7%にのぼり、今年は過熱の兆しすら見せている。ヘンリー・ポールソン元米財務長官は、「人民元の為替相場の調整は、インフレの抑制や通貨価値の向上による購買力の増大により内需が促進されるなど、中国にも利益をもたらす」と語った。しかし、中国は人民元の価値の急激な上昇は、利益率の高くない繊維や衣類など、多くの労働者を雇用する業種の輸出競争力に大きな打撃を与えるだろうと懸念している。
③人民元の切り上げ幅や時期についても異見
中国も人民元の為替相場の調整には同意している。グローバル金融危機による影響からも、事実上脱却しているからだ。しかし、いつ、どれだけ行うかについてを巡ってはギャップが大きい。香港メディアは来月下旬、北京での米中間戦略や経済会話開催を前後にして行われるだろうと見込んだ。先月まで、中央銀行である人民銀行・通貨政策委員を歴任した樊綱・中国国民経済研究所所長は11日、ボアオ・フォーラムで、「今後、1‾2ヶ月内に行われるだろう」と見込んだ。切り上げ幅は10%から最大40%以上まで必要だと言う指摘もあるが、一桁を離れることはないだろうという見方が多い。
④人民元の価値とアジア諸国の通貨価値が共に低評価
米国は人民元の価値の低評価により、ほかのアジア諸国の通貨も軒並み低評価されているため、米企業とこれらの国々の企業との競争も、米国には不利だと主張している。しかし、人民元が切り上げられ、中国で生産される製造業製品が競争力を失うことになれば、中国輸出の56%(昨年基準)を占める外国企業の多くが、工場をベトナムなどのアジア諸国に移し、米国は貿易赤字の相手国だけ変わることになるだろうというのが中国の主張だ。
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