北朝鮮は21日、韓国政府代表団に開城(ケソン)工業団地の労働者の賃金月70〜75ドルを引き上げ、2014年まで10年間猶予されていた土地使用料を2010年から繰り上げて支給するよう要求した。50年間の使用で合意した土地賃貸契約も、再締結を迫ってきた。言葉は再交渉要求だが、事実上、一方的な通知だった。大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への正式参加を「宣戦布告」と主張しながら、開城工団の運営と結びつけた。25日目に入った現代峨山(ヒョンデアサン)職員の抑留問題は言及すらしなかった。
政府代表団は、朝早く開城に駆けつけ、当局者間の会談形式を整えようと努めたが、北朝鮮が意地を張り、11時間も待たされ、わずか22分で会談が終わるという侮辱を受けた。会談場と同じ建物にいた現代峨山の抑留職員の顔すら見ることもできなかった。にもかかわらず大統領府は、「対話のモメンタムが用意されたと見ることができる」と意味を付与しようとした。玄仁澤(ヒョン・インテク)統一部長官は、「再交渉の提案を慎重に検討する」とトーンを下げた。
南北関係が硬直するだけ硬直した状況で、対話のモメンタムを維持することも必要だが、北朝鮮の意図を正確に把握し、賢く対処することがより重要だ。北朝鮮が、李明博(イ・ミョンバク)政府発足以降取ってきた一連の措置や今回の要求を見れば、政治的、経済的目的に活用してきた開城工団の用途は終わったと判断し、固辞作戦に入ったのではないか、疑念を抱く。韓国側が無理をしてでも開城工団を維持するのか、さもなければ閉鎖せよという脅迫のようだ。北朝鮮が一方的に閉鎖する場合、負わなければならない法的責任と補償問題、非難を意識して、韓国側にそのような危険負担を押しつけようという術策の可能性もある。
金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府が、南北和解の象徴だとか、経済交流の橋頭堡だと言って大騒ぎした開城工団が、今になって北朝鮮による人質へと転落してしまった。政府は、南北関係と経済的側面で、開城工団の效用性を抜本的に考える必要がある。北朝鮮に、開城工団を放棄することもできるという考えを強く示す必要もある。
北朝鮮が抑留した職員を実質的な人質とし、金を要求して駆け引きすることは、誘拐犯の振る舞いと違いがない。政府は、弱腰で振り回される印象を与えてはならない。いかなる場合でも、韓国の職員が北朝鮮に抑留された状態では、開城工団再交渉はありえないという点を、北朝鮮に明確に分からせなければならない。政府は、PSI正式参加が北朝鮮と無関係だと言っておきながら、対北朝鮮の変数によって、3度も延期する自縄自縛の失策を犯した。開城工団と関連しても、このように無力なご機嫌うかがいを繰り返してはならない。