
報道機関やユーチューバーなどが虚偽・捏造情報を故意に流布した場合、最大で5倍の懲罰的損害賠償を科す情報通信網法改正案が、24日に国会で可決された。与党「共に民主党」は、虚偽・捏造情報が瞬く間に拡散し、混乱や憎悪をあおる問題を是正すべきだとして法改正を進めてきた。これに対し、野党は「オンライン口封じ法」と批判し、参与連帯など市民団体も「言論による権力監視を萎縮させる」と反対したが、法案は強行処理された。
虚偽・捏造情報の無差別な拡散を防ぐ一定の規制が必要なのは確かだ。最近も、ユーチューバー「ツヤン」を巡る虚偽情報を流して利益を得た、いわゆるサイバー・レッカーの悪質行為が問題となった。こうした行為は厳正に対処されるべきである。だが、報道機関の取材・報道まで射程に入れる今回の改正法が施行されれば、深刻な副作用が避けられない。まず、虚偽・捏造情報かどうかを判定する基準が曖昧で、恣意的に運用される恐れが大きい。そこに5倍の損害賠償が重なれば、報道機能は著しく萎縮せざるを得ない。
とりわけ、政治家や高位公職者、政府機関が不都合な報道の拡散を防ぐため、とりあえず損害賠償を請求する「戦略的封殺訴訟」が横行する可能性が高い。こうした訴訟が相次げば、それだけで報道機関の信頼は傷つき、記者も追加取材に強い心理的負担を感じざるを得ない。時間的・金銭的損失も免れない。「共に民主党」は、明らかに報道妨害を目的とする訴訟については、裁判所に「中間判決」を申し立て、却下できる規定があるとして問題はないと主張する。しかし、そもそも定義が曖昧な「虚偽・捏造情報」を巡る争いで、訴訟が長期化する可能性が高いことは、専門家も指摘している。政治家や高位公職者の不正疑惑を巡る報道が萎縮すれば、その不利益は国民全体に及ぶ。
米カリフォルニア州などでは、言論を封じる目的の悪意ある封殺訴訟だと裁判所が判断した場合、訴訟費用を原告に負担させるだけでなく、被告側が逆に損害賠償を請求できる仕組みが整えられている。韓国でも、報道内容が真実だと認識しながら後続報道を妨げるために訴訟を起こし、その後、事実であることが明らかになった場合には、報道機関や取材記者が被った被害の最大5倍を原告に負わせる制度を検討すべきではないか。そうしてこそ、この法律が言論に猿ぐつわをかませる悪法へと変質するのをわずかでも防ぐことができる。






