Go to contents

[社説]「31歳の匿名経済大統領」を誰が作ったのか

[社説]「31歳の匿名経済大統領」を誰が作ったのか

Posted January. 10, 2009 06:21,   

한국어

経済の専門機関も予測が難しい経済危機の恐怖の中で、憚ることを知らない経済裁きで大衆的な人気を呼んだ「ミネルバ」(ペンネーム)は、1日中家にこもってコンピューターをたたく31歳の無職の青年だった。「外国の金融機関に勤めたことがある」という自己紹介も嘘だった。短期大学を卒業して、金融機関とは程遠い製造会社2社で働いたのが、経歴のすべてだった。彼は、妹と2人で住む家で、経済関連の書籍とインターネットサイトで得た浅い知識で、「ミネルバ・シンドローム」の虚像を作り上げた。

インターネットは本来、検証されないゴミと実のある情報が入り乱れる空間だ。インターネットのお陰で、「利口な群衆」(smart mob)が出現したという理論もあるが、頭脳と理性を作動させない愚かで浅薄な世代が現れたという批判もある。インターネットの中には、「集団知性」と「デジタル狂気」が共存する。インターネットで正しい情報と虚偽の情報をしっかりと選り分ける「デジタル・リテラシー」(digital literacy)教育が強化されなければならない理由だ。

身元も確認されない匿名のネットユーザーが、顔のない「経済大統領」として登場した一連の過程を振り返ると、理性よりも感性、科学よりも根拠のない扇動に振り回されやすい韓国社会の深刻な病理現象がうかがえる。知識人と専門家の自省が必要だ。朴氏がインターネットに流した内容のうち、いくつかの予測が運よく当たったというが、経済をよく知る人の目から見れば、粗悪な点が多かった。にもかかわらず、知識人と専門家たちは、沈黙するか無気力だった。

さらに、数人の知識人は、ミネルバ・シンドロームを煽ったという批判を受けるに値する。金大中(キム・デジュン)政権初期に、3ヵ月足らずの間、経済首席秘書官を務めた成均館(ソンギュングァン)大学の金泰東(キム・テドン)教授(経済学)は、朴氏を「私が出会った最も優れた師匠だ」と称えた。ソウル大学の金相鍾(キム・サンジョン)教授(生命科学部)は、「市民論客の分析が政府よりも信頼を得ている以上、ミネルバのような市民知性は登場し続けるだろう」と語った。

政府は、ネットユーザーたちから、「ミネルバのように予測できないのか」という嘲弄を受けながらも、経済現象を歪曲する虚像の論客を放置した責任は大きい。すべての経済省庁が、アマチュア煽動者にしてやられたと言っても過言ではない。朴氏の文章が大衆に影響を及ぼすまでになったからには、論理的に説明し、説得する作業に乗り出さなければならない。

一部の左派メディアは、朴氏が検察に逮捕されると、「政府を困惑させたインターネット論客を検察が処罰することは、表現の自由を萎縮させる」と憂慮する意見をほのめかした。「政府が、金融機関と企業にドル購入禁止命令を下した」という内容は、市場に混乱をもたらす恐れがある虚偽事実の流布にあたる。匿名性に隠れて他人の名誉を傷つけたり、虚偽事実を流布して、国家・社会を混乱に陥れることを防ぐ法的・制度的補完が急がれる。

ポータルサイトの責任も大きい。朴氏は逮捕されるまで、ダウム「アゴラ」に約500件の書き込みをしていた。アゴラは、偽りが多く中身のない論理で、米国産牛肉を狂牛病(BSE=牛海綿状脳症)牛肉に追いやり、韓国社会を3ヵ月以上混乱させた震源地だ。アゴラは、狂牛病牛肉ろうそくデモ以来、根拠なく偏狭な主張で社会対立を助長したケースが一度や二度ではない。影響力が莫大になったポータルをこのように無責任な空間に放置してはいけない。

朴氏の実体が明らかになって、多くの国民は、新興宗教の教主に詐欺にあったような心情を感じている。ミネルバのような匿名の論理にネットユーザーが歓呼し、社会混乱につながる事態が再現されないという保証はない。虚像と扇動の論客がまた出現して、国民を惑わさないように、国民みなが、インターネットを理性と科学が支配する空間にする努力が必要だ。