KBSが正しいのか、政府が正しいのか?昨年6月、KBSスペシャルは「FTA12年、メキシコの影と光」という番組で、メキシコの国民経済が全滅したと主張した。米国の巨大資本がメキシコの農村や企業を完全に掌握し、人々は職を失って露天商になったり、不法移民者にならざるをえなかったと主張した。KBSとはあうんの呼吸を誇っていた政府が、めずらしくただちに反駁に乗り出し、「国民の放送」KBSを信頼していた人々を戸惑わせた。
◆結論から言うと、KBSが間違っている。因果関係の分析なしにすべての悲劇を北米自由貿易協定(NAFTA)のせいにしているからだ。05年、国際通貨基金(IMF)の報告書のうち、文字を省いてグラフだけを見ても、メキシコのNAFTA以前と以後は大きく違う。域内輸出は2倍、外国人投資は4倍、国内総生産は2倍近く増えている。しかし、露天商や不法移民も急増した。硬直した労働市場や規制、レベルの低い教育は依然として変わらず、疎外階層がさらに押し出されたためだ。
◆「メキシコから学ぶことのできる教訓は、自由貿易協定(FTA)を足がかりにして、構造改革を行ってこそ最大の成果を上げられるということだ」と、IMFでは強調している。メキシコは金融を開放してからも、国営銀行の保護にこだわって、1994、95年と、激しい通貨危機に見舞われた。強力な教職員組合が主張する平等教育のために技術力を育成できず、高付加価値の製造業に移行できないまま、中国に出し抜かれた。2003年、それまで推進してきた雇用と解雇の自由化も労組の反対でくじけた。エネルギー産業などの放漫な公営企業や不正腐敗も根強く残っている。
◆FTAは万病の根源でも、万病の治療薬でもない。開放した後も半分の改革で、半分の競争だけを認めれば、効果も半減せざるをえないということに過ぎない。まして韓米FTAには、教育や医療・サービスなど、我々の競争力を高められる重要な部分が抜けている。韓国政府は昨年2月、「メキシコの財政やエネルギー、労働市場の構造改革の遅延が潜在成長率を下げた」と分析した。問題や解決法はすでに知っているというわけだ。ならば、政府は率先して公共改革を始め、「真意」を示すべきだ。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com






