1945年の南北分断直後、韓国が食糧難を経験したのは、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の興南(フンナム)肥料工場からの化学肥料の供給が途絶えた要因が大きかった。興南肥料工場は、年間生産量が48万トンにもなる世界的な肥料工場だった。韓国地域は、同工場で生産する肥料の3分の2の供給を受けていたが、一瞬にして供給が絶たれたのだ。1961年に忠州(チュンジュ)肥料工場が竣工するまで、韓国の農業は苦戦せざるを得なかった。
◆興南肥料工場は最近設備が老朽化し、十分に稼動していない。北朝鮮が独自に生産できる化学肥料は約5万トンにすぎず、適正需要である60万トンの10分の1にも及ばないという分析だ。産業革命前まで世界人口は10億人を超えたことがなかった。慢性的な食糧不足が原因だった。しかし今日、地球上で60億人の人口が維持できるのは、化学肥料のおかげであり、食糧の増産が可能だったためだ。肥料を確保できない限り、北朝鮮の食糧難解決は難しい。
◆丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官がラジオの対談番組に出演して、「北朝鮮の人々は韓国がコメと肥料を与えなければ、南北関係に何の魅力も感じない」と述べた。27日に平壌(ピョンヤン)で開催される南北閣僚級会談を前にして出た発言だ。北朝鮮が言ういわゆる「民族協力」の実体が何なのか、この一言で明らかになる。韓国からカネと物資を得ようとしているという「体験的告白」に相違ない。丁元長官は、金大中(キム・デジュン)政府末期と現政府の初期に統一部長官を務め、北朝鮮と接触してきた責任者だった。
◆コメと肥料は、人間が生きていくための最低条件だ。これすら解決できない金正日(キム・ジョンイル)政権はともかく、韓国政権はどうか。丁元長官が言う「北朝鮮の人々」とは、北朝鮮政権の関係者だろう。現政権は結局、金正日政権と協力してきたことを認めたのだ。進歩の価値は、自由と人権を追求し抑圧と対立することにある。盧武鉉大統領は自らを「柔軟な進歩」と呼んだが、北朝鮮住民の非人間的な暮らしに背を向けた「民族協力」は、進歩と協力、そのいずれでもない。
洪賛植(ホン・チャンシク)論説委員 chansik@donga.com






