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[オピニオン]トリノの教訓

Posted February. 15, 2006 04:47,   

06冬季五輪が開かれているイタリアのトリノは、韓国の蔚山(ウルサン)に匹敵する都市だ。蔚山が韓国の自動車産業の歴史だとすれば、トリノはイタリアの自動車そのものだ。ここで1899年イタリアの国民企業であるフィアット(FIAT)自動車が誕生した。今でもフィアットグループの本社はトリノにある。フィアットという名前自体が、「トリノにあるイタリア自動車メーカー(Fabbrica Italiana Automobili Torino)という意味だ。今回の冬季五輪の開幕式でフィアットの赤い競走車が轟音とともに五輪旗を描きながら走るイベントが演出されたのも、このような歴史的な背景からだ。

◆トリノは韓国の自動車とも縁の深いところだ。韓国最初の固有モデル「ポニー」が世界にはじめて紹介された舞台がトリノだった。1974年ポニーを開発した現代(ヒョンデ)は、同年トリノで開かれた国際自動車博覧会に出品し、予想外の好評を得た。そして2年後、エクアドルに6台を輸出し、「現代自動車の神話」が始まった。現代・起亜(キア)自動車は昨年377万台を販売し、世界7位の自動車メーカーに躍進した。

◆自動車工業都市のトリノが、そのイメージから脱却するため五輪の開催に目を向けたのは皮肉なことだ。フィアットは1970、80年代の激しい労使紛争を避けて、賃金の安いブラジル、ポーランドなどに工場を移転した。そのため、働き口が減ってきたわけだ。そこで、トリノが自助対策として考えたのが五輪であり、1999年ソウル国際五輪委員会(IOC)総会で今回の冬季五輪の誘致に成功した。

◆労使関係が自動車業界の地図を塗り替える上で決め手になるということは、昨日や今日の話ではない。一時は世界自動車市場を支配していた英国のメーカーが、対立的な労使関係のため没落しており、数年前ルノー自動車に買収された日本の日産も労組の「100日闘争」が廃業の火種となった。フィアットも最近、4、5年間で数万人をリストラする構造調整に踏み切ったものの、自動車業界トップ10入りができずにいる。委員長さえ選べず、「ことあるごとにボイコットする」全国民主労働組合総連盟の組合員たちは、「トリノとフィアットの教訓」を知っているのか。

宋大根(ソン・デグン) 論説委員 dksong@donga.com