●外資系企業まで「出産のススメ」
ソウル江南区道谷洞(カンナムグ・トゴクドン)にある日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)コリアの事務所。
ゆったりとしたソファーとエアクリーナーを備えた7坪の広さの「ママの部屋(Mother’s Room)」という休憩室が、今年7月に設けられた。ここには、母乳を安全に保管し、退社する時に持って帰れるように、冷蔵庫や殺菌消毒器が設置されている。
妊娠7ヵ月目のマーケティングチームの金ソンヨン課長代理は、「体調が悪く、眠くなったとき、『ママの部屋』を非常に便利に活用している」と話した。
米国系建設会社パーソンズ・コリアは全職員を対象に、子どもの数と関係なく、出産するたび50万ウォンの出産奨励金を支給している。最近は、役職員の子女に支援する学費も、対象を無制限に拡大した。韓国IBMは今年8月から在宅勤務を許可している。週3日まで在宅勤務を許可し、子どものいる女子職員が頻繁に利用している。米国系製薬大手・MSDは、出産した女子職員の場合、1年間、他の職員より1時間先に退社できるよう配慮した。大韓航空とアシアナ航空は、客室乗務員に対し、約7ヵ月の産前休暇を保障する。職場の中に保育施設を設ける企業も増えた。
SKC&Cは、今年8月に完工した京畿道城南市盆唐(キョンギド・ソンナムシ・プンダン)の本社(Uタワー)に、およそ80坪にのぼる幼児保育施設「ヌルプルン(いつも青い)子どもの家」を設けた。ポスコ(旧浦項製鉄)は、来年1月まで、慶尚北道浦項市(キョンサンブクド・ポハンシ)と全羅南道光陽市(チョンラナムド・クァンヤンシ)に、それぞれ300坪の広さの保育施設を設けることにした。
●「国家が抜本策講じるべき」
金融機関は、少子化対策にさらに積極的だ。銀行連合会と金融産業労組は、不妊女性の場合、最大1年間の無給休暇を許可し治療を受ける「不妊休職制」を導入することに合意した。新韓(シンハン)銀行と朝興(チョフン)銀行は、顧客が子女を出産する場合、基本金利・年3.0%に0.75%のボーナス金利を加える「愛の約束預金」を今年8月から実施中だ。
ウリ銀行は先月、女性専用の「美人通帳」を披露した。加入期間に子どもを産んだ定期預金の顧客に、年0.1%の金利優遇の恩恵を与え、生まれた子どもの名前で1472(「一瀉千里」の韓国語発音を示す数字)ウォンを入れた積立通帳をプレゼントする。
大韓商工会議所・産業環境チームの金ギテ次長は、「各企業が率先して出産の誘導に積極的なのは、福利・厚生を強化し、業務への集中力を高めようとするもので、生産性向上に向けた一種の投資」だと分析した。
だが、企業の出産奨励策は一時的な方便、との見方もある。全国経済人連合会・労働福祉チーム長のチョ・ソンハ常務は、「休暇日数を増やしたり保育施設を運営したり、出産費を補助したりするくらいでは、大きな効果は得られないだろう」とし、「たくさん産まないほうが楽だという意識を変えられるように、国家が税制恩恵など多様な対策を立てるべきだ」と指摘した。
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