盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の「権力のすべてを委譲することも検討する」と述べた25日の発言は、これまでの類似の発言に比べて最もレベルの高いものだった。
盧大統領は2003年10月、大統領選挙不正資金問題が浮上したときも再信任国民投票を提案するなど大統領職をかけた冒険的提案を行った。「大統領職をまっとうできないような危機を感じる」「政界を引退する意思がある」と述べるなど極端な発言をも連発した。
しかし、以前の発言は危機状況を正面突破するという意志表現の性格が強かったという点で、大連合政府を通じて権力を委譲するという最近の提案とは脈絡が違う。
先月28日、ハンナラ党との大連合政府を初めて提案したとき、盧大統領は「事実上、政権交替提案」と表現したが、権力委譲の具体的形式については「連合政府を構成する政党に内閣制レベルの権力を委譲する」と説明した。
例えば、ハンナラ党の朴槿恵(パク・グンヘ)代表に総理職を委譲し、ハンナラ党とヨルリン・ウリ党が一緒に内閣を構成するような構想だった。権力を分担する形だった。
しかし、25日の発言は権力全部を委譲する可能背もあるというものだ。盧大統領はこの発言を、即興的に投げかけるものではないという点も明確にした。
盧大統領はテレビ討論で「内閣制のように国会を解散、総選挙を実施して再信任を問うこともできず、世論調査の結果によって突然大統領職を降りることもできず、苦心している」と述べた。すでに権力全部を委譲する具体的な方法論まで検討したということだ。
最近、ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相と日本の小泉純一郎首相が議会を解散して総選挙を実施する勝負に出た事例によく言及するのも同じ流れだ。
これに対して、大統領府の関係者らは「単純に意志を強調するレベルの発言ではないことは明らかだが、内部的にそれに関して具体的な方法論を検討していることはまったくない」と述べた。
しかし、大統領責任制を採択している憲法の下で大統領が権力の全部を野党に委譲するための方法は、大統領職を辞退したうえで選挙を行うしかない。
そのため、ウリ党の一部からは、盧大統領が早期改憲を念頭に置いているのてはないかという観測も出る。
年末まで大連合政府を主張し続け、結局は内閣制の改憲カードを切るだろうということだ。
これと関し、高麗(コリョ)大学の張永洙(チャン・ヨンス、法学)教授は「辞任後に選挙を通じて権力を委譲するのは問題ないが、現在の状態で権力を委譲することは違憲」とし「大統領が本当に実現したいなら改憲しなければならない」と話した。
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