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魂が盛り込まれた酒、情をかもし出す職人

Posted September. 24, 2004 21:52,   

飲み会だからといって酒が主役ではない。酒はいつも雰囲気を盛り上げる役目に止まるだけで、その宴会の目的になっていないものだ。さらに、最近韓国社会の酒を代表するという焼酎とビール、そして爆弾酒(ビールにウィスキーを交えた飲み方)がその対象になるには大きく及ばない。

宴会といえば一気飲みがつきものの酒文化のため、忘れていたあるいは忘れたものとてっきり思い込んでいた韓国の伝統酒を、筆者は全国をまわって探し出し、私たちに差し出す。

100種類の花草に100種の花を入れた百花酒(ペクファジュ)、竹の木のオイルを取り出した竹瀝膏(チュクリョクコ)、ゆすらの葉、梨の葉、よもぎの入ったリップセ穀酒、犬肉を煮込んで入れた戊戌酒(ムスルジュ)、密酒取締り網を潜り抜けたチプカリ酒、韓国流のカクテルである過夏酒(カハジュ)など、見慣れてはいないが珍奇な酒だ。

筆者は、このような酒を吟味と賛美の対象として位置づける。ただ韓国の伝統酒だからではなく、それに値する価値があるためだという。

百花酒に入る100種の花は、それぞれ咲く季節が違うため、1年いっぱい山だの野原だのをまわってはじめて集めることができる。これに、干したらゴマ粒のように小さくなってしまう花もあるので、その量に気を使わなければならない。竹の木を煮込んで取り出した油である竹瀝を得るのはまた、どれほど難しいものか。竹の木の切れをいっぱい詰めこんだかめと土の中に埋めたつぼの口をあててから、籾殻で墓のように覆いかぶせ、三日間火を通して煮込む。これほど手の込んだ食べ物を見つけるのは簡単ではない。

このような酒は薬としても使われる。リップセ穀酒を飲むと頭がさえてくるといわれ、昔科挙(カコ・高麗〜朝鮮時代に行った役員試験)を受けに出かける際に瓢箪に入れて科挙を受ける前夜に飲んだという。

隳豆將軍(あだな)の全琫準(チョン・ボンジュン)は、官軍に連れ出される際に、竹瀝膏を求めたという。酒を飲んで苦痛を紛らわしたいというわけではなく、竹瀝膏に怪我をした足の傷を治す効き目があったからだ。弱い姿を見せまいという全琫準の気概を手伝った酒でもある。また、戊戌酒はお年寄りが食前または食後に、小さいコップ一杯くらい飲めば、長寿に役立つ。

薬を飲むものだから、飲みすぎたり、酒乱したりすることがまずないのもいい。

ハンサンソコクジュのような酒は、飲むと指先や足指先から酔いが回ってくるという。しらふでありながらも、体が言うことをきかなかったので、昔の学者たちは酒を思う存分飲んでからも、よりさえてきた頭で詩を吟じることができたわけだ。頭から酔って、手足を勝手に動かせる今の酒とは比べ物にならない。

さらに、祖先たちは「頲飮酒礼」といって、酒の礼法をも身につけていた。一杯百拜(酒一杯にお辞儀100回)の心構えで酒を飲んだのだ。主人がお客を迎え、酒をご馳走するまでの動作が102段階に区分されるほどだ。

だからといって、伝統酒を厳粛にしすぎた扱い方までをすることはない。著者が念頭に置いたのは、伝統酒そのものではなく、その酒を醸して吟味し、賞賛する過程だ。酒がなくなり、その酒に伴った文化が消え去ることへの惜しさを表している。甘ったるくてほろ苦く、すっぱい味のする伝統酒を作り始め、身と心に染み込むまでに享受したそのゆったりとした精神を取り戻そうとしているわけだ。

酒好きではなくても、この本で酒にからむ面白い常識が得られる。浮蟻酒(プイジュ)は、酒が熟成しきれば、米粒がありのように浮くため、ありの蟻字を入れた。私たちに馴染み深いドンドン酒がまさにこの酒だ。愛酒家にこの本は、すぐその酒の故郷に向かって旅に出させる力がある。



閔東龍 mindy@donga.com