現生人類のことを生物分類学では「ホモサピエンス」と呼んでいるが、「賢い人間」という意味だそうだ。本能を頼りにして生活するほとんどの動物とは違って、人間は頭を使って考え、論理的な判断を下すという意味で付けられた名であろう。実際、人間が重要な決定を下すときに本能や感情を抑え、理性的な判断に依存するという考えは古い。古典経済学では人間が自分の利益を極大化させようとする合理的な計算によって経済活動をすると信じている。
◆もちろん世の中がいつも経済学的モデルに従って動くわけではないが、経済学者らはモデルをより精巧に作ることで、現実にさらに近づけられると考えてきた。しかし、最近発達した「行動経済学(神経経済学)」は、人間の行動に対する根本的仮定が間違っているかもしれないという点を示唆している。ある学者は「人間の行動が理性と感情という二頭の馬に引かれる双頭馬車という喩えは正しいが、理性は小さな小馬に過ぎず、感情は象ほどの大きさだ」と主張する。
◆行動経済学の重要な実験道具は機能性磁気共鳴映像(fMRI)撮影装置だ。この装置を利用すれば、人々が経済的決断を下す時、脳の中で起きる過程を観察することができる。このような研究はかつて理解することが困難だった経済的現象を説明する上で大きく役立つだろう。例えば、株式市場が暴落する際、投資者が果して合理的判断によって株式を売っているかどうか、あるいは漠然な恐怖によって投売りしているかどうかが分かる。
◆fMRI装置で人々の政治的判断過程を観察してみるのも大変興味深そうだ。有権者が投票する際、自分と国の未来に対する理性的判断がどれほど働くか、政治家が意思決定をする際、個人的な欲心や感情をどれほど抑えられるかなどが分かれば面白いだろう。MRIの世界的な権威者を迎え入れるなど、脳科学研究に拍車をかけている我が国は、首都移転をはじめ、過去の歴史清算、国家保安法廃止など大きな政治的事案が絶えず提起されていて、実験の対象も十分だから、こうした研究に適した環境ではなかろうか。
吳世正(オ・セジョン)客員論説委員(ソウル大学教授・物理学)sjoh@plaza.snu.ac.kr






