トーマス・マルサスが1798年出版した「人口論」は当時、欧州の知識人社会を衝撃に追いこんだ。マルサスは簡潔な論理で、「人口数が国力であると同時に幸福の尺度」と思っていた欧州知識人たちの常識を根こそぎ覆した。マルサスの予言は爆発的な人口増加のため、大災いを避けられないという暗鬱な内容だった。人口は「1、2、4、8、16、32…」のように幾何級数的に増加するが、食料は「1、2、3、4、5、6…」のように算術級数的で増加するという論理の前で、大半の楽観論者は白旗を挙げざるを得なかった。
◆マルサスの理論は、彼の死後、多くの経済学者たちから批判を受けた。カール・マルクスもその中の1人だった。そのためか、マルクスの後裔である毛沢東は政権を握ると、反マルサス的な人口政策を繰り広げた。毛沢東の論理はマルサスよりずっと簡明な「数学」だった。食べる口は一つだが、働く手は二つだから、人口が多ければ多いほど経済は好況をおびるということだった。後には、中国も人口爆発の副作用を悟って産児制限政策に回ったが、1949年6億人だった中国の人口は、46年後、2倍に増えた。
◆様相は反対だが、長期的眼目がないのは韓国政府も同じだった。「やたらに産めば、乞食を免れない」と言った1960年代の家族計画標語は、夫婦1カップルが子女を5人以上も産んでいた時代だったから是非の対象にはならない。「2人も多い」、「あなた!私たちも1人だけ産みましょう」、「1人ずつ産んでも全国は超満員」などの標語が全国の電柱と塀に貼られたのが1980年代だ。標語が効果があったのか。一昨年と昨年の出産率が1.17と1.19だったというから、一人っ子時代は開かれたわけだ。
◆ところが、今は低い出産率のため大変だと騒いでいる。もちろん、過度に低い出産率が経済成長に妨げになるという事実が経験的、理論的に立証された以上、出産奨励政策は必要だ。にもかかわらず、いまいちすっきりしないのは、政府が今度は人口問題の両面を充分に察して長期計画を立てたのかどうか、あまり信頼できないためだ。国土は狭いし、失業率も深刻な状態だ。それに対する説明を、国民は聞きたがっている。国民にだけ「家族計画」を要求せず、政府も長い目で「計画」を立てる姿を見せてほしい。
千光巌(チョン・クァンアム)論説委員 iam@donga.com






