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楽園の島、タヒチ

Posted May. 12, 2004 23:00,   

昨年の秋のこと。西海岸高速道路を走って帰京する途中、車のラジオから長い間忘れていた、甘い音楽が流れていた。映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネの調べ。映画「秘密のデート(Love Affair)」のテーマだった。時間は午後5時。

出張に疲れていた私を、秋の海へといざなってくれた映画「秘密のデート」。なにも、格別な理由はなかった。音楽が流れると、ふと映画の舞台となった南太平洋の島、タヒチの景色が浮かぶと同時に、私の記憶の中からいつまでも忘れられない、あのタヒチの美しい夕焼けを思い出したのだ。

南太平洋に浮かぶ小さな島、タヒチ。その名を呼ぶだけで気分がよくなる、魔法の島だ。何の映画だったか定かではないが、恋人同士のもめ事の末にすねてしまった女性が、封筒一つで一瞬のうちに男の胸に飛び込む場面があった。その封筒の中に入っていたのは、他でもなく「タヒチ行きのチケット」だったのだ。

●「まるで古城のようだ」 画家・ゴーギャンも感嘆

この場面は、決して私の誇張ではない。誰でも、一度行ってみることだ。そう言われても余りあるということを認めざるをえないだろう。これ以上の美しい風光と安らぎを、この世では見つけられそうにないと思うからだ。この島の自然の色や、環礁とラグーン島の景観や、夕日と夕焼けに色づく海と空や、エデンの園がここではないかと思えるくらい、リラックスできるリゾートがまさにそれだ。

なかでも、夕日と夕焼けは最高だ。タヒチから西に15キロほど離れた、美しいモレア島の後ろに見える夕日。火山の噴火によってできた、でこぼこ様々な峰のお陰で、ポール・ゴーギャン(1848〜1903)から「まるで古城のようだ」と言われたこの島を背景に広がる夕焼け。

タヒチの島々は、すべて火山の噴火によってできたもの。なんと118ヵ所にのぼる。5つの群島に分かれたこの島は、その数もさながら、そこに占める海の面積もまた広い。欧州大陸からロシアを除いた面積に値するほど。両極端の距離も2000キロに及ぶ。タヒチは、この118の島々のうちの一つにあたる。

この全ての島々を含む国の名称は「フランス領ポリネシア」である。「フランス領」とは、財政、外交、国防の権利をフランス政府が行使する、フランスの海外領土という意味だ。

タヒチの中心都市、パぺエテ(首都)。パアア国際空港を離陸したジェットプロップ(ジェットエンジンプロペラー推進)航空機の窓から、海が見渡せる。そして、5分でたどり着いたモレア島。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」に出てきそうな、神秘に満ちた山岳風景が印象的な、美しい島だ。

一周道路に沿って、ヤシの木が生茂る島の周辺を走ること30分。尖った峰を背景に広がる草原で、馬が草を食べる美しい風景が、森の周りに展開される。映画「秘密のデート」で、ウォーレン・ビティーとアネット・ベニングが、仲良く馬を連れて歩いた場所だ。

●夕焼けの向うに広がるボラボラ島、素潜りの天国

118もの島々の中で、最も美しいとされるボラボラ島は、タヒチから45分の距離にある。環礁の真ん中に位置するこの島は、珊瑚の帯に囲まれた形をしている。滑走路は、島ではなく、周辺のモトゥ(Motu、珊瑚でできた島)にあるため、旅行客は滑走路のある島に着陸した飛行機から降りて、カーフェリーで島に向かう。

珊瑚を細かく砕いて造られた、白い滑走路。この世にたった一つしかない、珊瑚の滑走路である。

空から見下ろすボラボラ島の景色。幾何学的な形をした環礁と、それを囲む小さなモトゥ、そして環礁とモトゥの間には、湖のような海のラグーンが、さらにその海に浮かぶ、白いセーリングボート。地上の如何なるものにも真似できない、ボラボラ島の壮観。地上の何もかもが圧倒されるほどだ。その海では、素潜り(スノークリング)も同じ。サメやエイの大群が周りを泳ぎ回るなか、海底の秘境を鑑賞する。ここでは、人間も自然の一部になれるのだ。



趙誠夏 summer@donga.com