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[オピニオン]財閥家の夫人と嫁

Posted November. 17, 2003 00:49,   

ただいま町内一番の話題は、財閥家の夫人と嫁に関する話だ。偉く気取った席であれ、一杯飲むくだけた席であれ、こうした類の話は好奇心とともに話題に事欠かない。マスコミ関係の仕事をしているという理由で、たびたび好事家の話の出所となることはあろうが、自分も聞いた話をまるでじかに見たことのように話す「井戸端会議通信員」には到底かなわない。身分も名もない平凡な人々の情報収集能力と伝播力はまことにすごい。先日国内屈指の財閥総帥が苦境に立たされたときも、その夫妻の不和説が捜査の手がかりになったというデマが出回ったほか、北朝鮮の実力者を「謁見」してきたという女優に関する噂が一時もちきりだった。

◆話題のこの二つは十分に興行要素を持っている。まず、すべての平凡な男女の羨望と嫉妬の対象である財閥家を舞台にしている。「俳優」は一時韓国10大財閥企業の総帥と国内屈指の財閥家の若い相続者で、「女優」は60、70年代を風靡した韓国トップの歌手と90年代のブラウン管のトップスターとキャスティングも豪華だ。夫の実家と夫から捨てられた元歌手の財閥家の夫人は最近、離婚した夫とトップスターたちの赤裸々な恋愛遍歴を暴いた自伝を出版して話題を呼び、ちょっとうさんくさい元タレントの嫁は真夜中の外出先で高価な外車を盗難される事件で世間の噂になっている。

◆古今東西を問わず、金持ちの男と美女との結びつきは「共生の組合」だった。金持ちの男は惜しみない投資でこれ見よがしに美貌と才能を持ち備えた女をものにして自分の力を誇示し、美女は自分を長らくスポンサーしてくれる一方、欲望もまた満たしてくれるような財力家を必要とする。だが、この場合互いの相手に求めるものは夫と妻というよりはカネと美貌ではないだろうか。ギリシャの海運王オナシス(1906〜1976)が世界的なソプラノ歌手マリア・カラスと内縁関係を結んで文化面の大物として浮上し、のちに故ケネディ米大統領夫人のジャクリーヌと結婚し米国の最高上流社会に進出したこともその一例であろう。

◆金持ちの男とトップスターの美女の結婚はよく、「白馬に乗った王子様」と「シンデレラ」との結びつきとして描かれる。だが、年月が流れ、シンデレラが若さと美貌を失った後の暮らしはよく知られていない。王子は十中八九王になったろうが、シンデレラは若くてみずみずしい新しいシンデレラにその座を奪われて、隅っこで忍苦の涙を流してはいないだろうか。愛のない物質と肉体の結合が老年まで続くことは困難だ。金持ちにとって美女は誇示欲の対象であり、美女にとって金持ちは欲望の後援者だったのだから。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com